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森下真樹 (ダンサー)


森下真樹は一体何者だろう?
舞台上で一人、とびはね、走り、うたい、しゃべり……ともすれば観客へツッコミをいれる。
しかしこれは、間違いなく「ダンス」なのだ。

「森下チキチキ真樹バンバン」「しっちゃかめっちゃか暴れん坊」

奇怪なことばが、振り付きでくり広げられる空間。その「リズム」と「音」が、からだに刻みつけられていく。予測不可能な流れに身をまかせながらも、私たちはその濁流をかいくぐる準備をしなければならない。

長い手足を活かしたムーヴメント。端正な容姿。しかし、油断してはいけない。そのユニークなパーソナリティから生み出されるパフォーマンスは、パワフルかつクレイジー。私たちを守る「プロセニアム・アーチ」は、ここには存在しない。空間を自在に行き来し、森下真樹は観客の心とからだを鷲掴みにしていく。その心地よさは一種、麻薬のような中毒性をもっているのだ。

高校時代にダンスを始め、千葉大学モダンダンス部メンバーを中心とした「Study of Live works 発条ト(バネト)」のダンサーとして、主要な作品・公演に出演。1997年から3年間、「伊藤キム+輝く未来」に参加し、そこで出会ったメンバーとともに「まことクラヴ」を発足。2003年、『デビュタント』でソロ・デビューを果たした。劇場に限らず、街に飛び出し、精力的にパフォーマンスを行っている。驚くべきことに、その「開いた空間」でも、周囲をまきこみ、森下真樹ワールドを浸透させていくエネルギーはまったく変わらない。

JCDN「踊りに行くぜ!!」などで全国各地をかけめぐり、今年はすでに10数回の公演を重ねている。また05年10月に丸の内で開催された「東京コンペ#2」では、ダンス&パフォーマンス部門優秀賞を受賞。12月には、こまばアゴラ劇場で、これまでの集大成となる「森下真樹ダンスショウ!!」が控えている。

コンテンポラリー・ダンスを見なれている人も、見なれていない人も、まずは「森下真樹」を体験してほしい。あますところなく身体を使い、彼女は踊る。からだの軌跡から物語が生み出されていく。それはドラマティックであり、真剣ゆえ可笑しい。
我慢することはないのだ。ただ、このおもしろさを受けとめるために、私たちの感度も試されているということを忘れてはいけない。(TS 秋山)

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『東京コシツ』(東京コンペ#2優秀賞)


『東京コシツ』©渡邊聡

秋山:まずは、10月2日に丸の内で開催された「東京コンペ#2」ダンス&パフォーマンス部門優秀賞、おめでとうございます。振り返ってみていかがですか?

森下:ありがとうございます。表彰式の時のコメントは本当に頭がまわらなくて、「カ、カメラ10台買います」とか言ってしまいました。16組中10組が何らかの賞をとるというプレッシャーの中で、新しい作品(『東京コシツ』)をつくったんです。

秋山:今までにも、『コシツ』というタイトルで何カ所か公演されてますが、今回受賞した『東京コシツ』との違いは何でしょう?

森下:元になっている「狭いエリアの中で一人であそぶ」というコンセプトは一緒ですけど、今回はまったく形を変えてやりました。「10分一発勝負だ!」と思ってまず、小道具を減らしたんです。モノに振り回されたくない(笑)。照明もスポット1本だけ。音も、音楽は使わないって決めて作りました。自分のアナウンスを録音したものに合わせて動いたんです。すごくシンプルで、どこでもできるようなものになりました。

秋山:森下さんはソロ活動の他に、「東京コンペ#2」でダンスバザール大賞を受賞した「まことクラヴ」にも所属されてるんですよね?

森下:そうなんですよ。伊藤キムさんの「伊藤キム+輝く未来」に参加していた時に出会ったメンバー中心にやってます。

秋山:所属名は「中森下真樹菜」(笑)。これは、「森下真樹」とは別人なんですか?

森下:一応、別人ということにはなっていますけど「どこがちがうんだ?」と最近言われます(笑)。別人格「中森下真樹菜」なのですが大差ない。

秋山:つい先日も、「まことクラヴ」の公演で広島に行かれてますが、まことさんとコンペのことで何か話されました?

森下:はい。私は「まこクラ」が大賞だろうな、と思っていたんです。で、部長は私がとるんじゃないかと思っていたようです。表彰式の時に隣だったので、肘でつっつきあって「どっちだどっちだ」みたいな。そのあと優秀賞の発表で、一番目に私の名前が呼ばれたんです。隣で「よっしゃ!、もう“まこクラ”しかない!」という心の声が聞こえてきました(笑)。

秋山:上位を独占ですね。

森下:いろんな人に「W受賞おめでとうございます!」って言われるんですけど、「いや、私は今回“まこクラ”には参加していないんで」と。

秋山:それはやっぱり、ライバル的な感じもありますか?

森下:100万と20万の差はでかいです。ちくしょう!(笑)

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ダンサー?アナウンサー?女優?お笑い芸人?


『デビュタント』

秋山:最初に森下さんの公演をはじめて見たのが、青山円形劇場での「日韓ダンスコンタクト2005」なんです。ソロ作品『デビュタント』を見終わって、「油断して見てるなよ!」と言われたような気分になりました。スタンドマイクが1本、下手(しもて)にあって、舞台の奥から森下さんがメタリック・シルバーのきらきらした衣装であらわれる。静かに動き出して、だんだん加速していきますが、どう展開していくのかまったく予測がつかないので、どんどん惹きこまれていきます。動くたびに、スリットからちらりと真っ赤な裏地が見え隠れして、それもまたドキドキしましたが。

森下:ソロ・デビュー作品なので、『デビュタント』というタイトルをつけました。社交界に初めて出る娘、初舞台の女優という意味があります。なのでドレスアップのイメージがあるんです。

秋山:「ツクパヤ」という、スキャットのような音楽を使ってましたが、あれはご自分で作られているんですよね?

森下:妹と一緒につくっています。普段家でも、「ツッツッチャッツッツッチャッ」っていきなり始まるんです。

秋山:それをきっかけにして、森下さん自身もしゃべり出す。その台詞が、絶妙なんです。踊りながら喋り、合間に喋り。何も知らずに見ていた人はびっくりすると思うんですが、またそのびっくりしていることも見越した台詞が挟まれていくので、どんどん魅入ってしまう。

森下:『デビュタント』を見たお客さんに、「ダンサーなんですか、アナウンサーなんですか、女優なんですか、お笑い芸人なんですか」って聞かれるんです(笑)。

秋山:何て答えてるんですか?

森下:思った通りのもので、と。『デビュタント』のいくつかの台詞は、踊っていて出てきた言葉をピックアップしました。言葉に「あて振り」をしているということもあり、からだと言葉は切り離せません。自分のからだから出てきた言葉によって、自分を演じているという感覚なので、それを「台詞」とはあまり思っていないんです。舞台上でしゃべりながら踊った一番最初の作品は、発条トの「タイムニットセーター」という作品です。そのとき、お客さんのわかりやすい「反応=笑い」があって、なかなか面白いと思った。

秋山:パブリックシアターで上演された演劇作品「雪の女王」に参加された時はどうでしたか?

森下:自分以外のものを演じることにすごく抵抗がありました。少し恥ずかしいような。そしてわざとらしくなってしまう。言っていることと気持ちとからだに「温度差」があるというか。そこをいかに近づけていくかが芝居の面白いところだと思いました。脚本を見て「げ!これはちょっと言えないよ」と思う部分もありましたが、演出家も私がやりにくそうにしていると「そこはこうしよう」と、お互いが近づいて間を埋めていくという感じでした。

秋山:実は『デビュタント』を見て、森下さんは言葉を「音」として捉えているのかなあという気がしたんです。「森下チキチキ真樹バンバン」とか。

森下:すごい、おぼえてる(笑)。

秋山:忘れられないですよ、一回見たら。「森下チキチキ真樹バンバン」という振り付きですし。厳密に言うとちがうんですが、なんとなく俳句っぽい。こう残りますよね、リズムが。

森下:言葉でリズムをつくるのはすごく好きですね。意味はひっちゃかめっちゃかだけど。

秋山:先日参加されていたダンスコレクションでも、言葉が炸裂していましたね。

森下:「今日も3キロ冷蔵庫の中に今日も3キロウォーキング」。佐藤さんの演出なんですけど、「スーパー一人暮らし」というお題をもらって、そこからイメージする言葉をピックアップしたんです。

秋山:一気に書かれたんですか?

森下:3分ぐらいで思いつく限り。書いていくうちにだんだん言葉で遊ぶようになるんです。韻を踏んだり、リズムでふざけたり。手だけじゃなくて、からだも動いてくる感じです。断片的で、はっきりした意味はないけれども、ちょっとイメージさせるような言葉、イメージがふくらむ感じの言葉を選びました。

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ダンスをはじめるきっかけ


秋山:ダンスは松山の高校時代に、モダンダンス部から始められたそうですが、そもそものきっかけについて、小さい頃の「遊び」の延長と以前話されてました。「ものまね」や「つま先立ちごっこ」といった遊びを考えて、友だちの輪の中で先生のようなポジションにいたということですが、遊びを開発するのは好きですか?

森下:大好きです! それで手話も開発したんですよ。

秋山:手話?

森下:「あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ、ん、゛……」(猛スピードで手が動く)。これで、一番上の行だけつくって、「う」だったら、「あ」行の(手で3)。

秋山:母音だけ押さえておけば、オッケー!

森下:授業中、席が離れていても、これで会話してたんですよ。

秋山:超ダイレクトですね(笑)。しかもずっと憶えてる。今も使ってるんですか?

森下:これ、小学校6年生の時に作ったんですけど、「まことクラヴ」のメンバーにも教えたり、『デビュタント』でも使ったり。

秋山:森下さんは、言葉の表現とからだの表現、どちらが先に表にあらわれるんでしょう?

森下:私、「マスカケ相」なんですよ。感情線と知能線が一緒になってる。

秋山:ほんとだ。くっきり!

森下:手相にもあるように、と、言い訳していますが、言葉で伝えるっていうのが苦手なんです。感情が先走って、涙が出たり、鼻水が出たり。伝えられない気持ちが先走ってからだが追っかけていく感じ。言葉は一番最後です。もちろんしゃべる時も、ジェスチャーなしではいられません。

秋山:何か伝えようという気持ちが強い時はもう、踊ってますか?

森下:そうですね、あまり意識はしてないんですけど、気づいたら……からだが動いています。他の人を見ていても、しゃべる時についてくるからだの動きは面白いなと思うようになったんです。しゃべってる時に出てくる人の癖から「振り」にしていったら面白いなと。癖でも、繰り返していくうちにそれがちがう方向に動きが発展していく。

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アイデア・ノート


秋山:動きというのは留めづらいと思うんですが、いろんな人を観察していて癖のある動きを見つけた時や、舞台でしゃべる言葉はどうやって拾っているんですか?

森下:忘れないように携帯のメールですぐ打ちます。

秋山:最近反応したものって何でしょう。

森下:あとで見るとわけがわからないものもあったりするんですけど、こんなメモが(笑)。

携帯sub.「歩いていろいろいろんな顔」

森下:で、これ開いてみると本文が何もなかったりするんですよ。

秋山:怪メールですね(笑)。

森下:この前東京コンペ用につくった『東京コシツ』は、鏡を見て、癖の動きを全部これに書きました(バッグから落書き帳を取り出す)。動いてみながら、絵がうまく描けないので、動きの説明を書き留めて、また動いて。最終的に使うのは、半分ぐらいです。

秋山:常にアンテナを張って探してる状態ですか?

森下:そうですね。いつも落書き帳を持ち歩いてます。あとは携帯カメラで写真を撮ったり。そうそう、何があったか忘れないように、その日食べた夕食を手帳に書いたりしてます。何を食べたかわかってると、今日はこういうことをしたんだっていうのをおぼえてるんです。

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MY SOURCE マイ・ソース


ジプシー

私には出身地がない。本籍熊本出生地大分出身地大阪だけど住んだことない。鎌倉→世田谷→西船→心のふるさとわが松山、あぁ~夏目さんも心は松山。→アメリカ→カナダ→フランス→韓国→スイス→オランダ→ポーランド→イタリア→エジプト→スペイン→ベトナム→イタリア……幼いころからの転職族環境が勢い余って地球を歩くのが大好物となる。現在、実家は千葉におさまる。森下ジプシー下巻き。

満月

満月が穴にみえる。のぼって上の世界を覗いてみたい。上の世界にも満月があって、そのまた上の世界にも満月があって。私たちは穴の穴の穴の穴の穴の穴の………底。

マスカケ相

私の手相は感情線と知能線が合体したマスカケ相。なるほどどうりでことばよりも手が、足が、涙が先に出てしまうわけだ。ことばで伝えられない気持ちが先走ってからだが追っかけていく、このもどかしい体質はマスカケ相だから仕方ないのか。

Study by live works 発条ト(バネト)

踊り続けてこれたのはこれがあったから。大学時代の仲間とスタートし、たくさんの人とつながり現在に至る。私はここから生まれた。オギャー。もうすぐ10年
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まことクラヴ

私が別人格、中森下真樹菜で参加する部活動。森下と中森下、大差ないじゃんなんて最近言われて、はっきり言って自分でもわからなくなる。そんなこんなでもうすぐ4年。
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ジプシー

秋山:場所が変わることで、何か具体的な影響はありましたか?

森下:地図帳を見るのがすごく好きで、オススメの本を一つあげてくださいと言われたら、絶対地図帳なんです。日本地図でも世界地図でも、本当に何時間でも見ていられる。生きてる間に、地図帳に載っているところ全て行きたい、そう思いながら見ています。私は今ここでこうしているけど、あそこにいたら何をやっているだろう・・・もういたたまれなくなっちゃいます。いろんなところに行きたいという衝動はつねにあります。

秋山:あそこへ行きたいけれど、今、私はここにいるというのは、ジレンマになったりしませんか?

森下:「あそこへ行きたい!」という想いそのものが、私のエネルギー源になっているのかもしれません。今はここにいるけど、想像するだけでも楽しいものです。ゴミゴミしている新宿駅周辺は今の時間どうだろう?とか、あの時のバルセロナのカタルーニャ広場はどうだったとか。行ったことはないけれど、いつか行きたい南米を想像したり。

秋山:そのヴィジョンはずっと残っているものなんですか?

森下:どんどんどんどん、よいものになってるかもしれません。過去の良い思い出がどんどん膨らんでいくみたいに。

秋山:理想の私の世界。

森下:そう(笑)。

秋山:実際に見てしまったらギャップがあるかもしれないですね。想像が超えてしまっていた時ってあります?

森下:想像が超えてたのは、ないですね……きっと。実際はあったのかもしれないんですけど、そこに行けば想像していたもの以上に面白いものが必ず見つけられる。というか、見つけて帰らなきゃ損。

秋山:かならず塗り替えられるんだ。

森下:ええ、超えていたいので。やっぱり実際行ってみなきゃですね。

秋山:面白いですね、場所が増えるたびにどんどん変化して地図が書き換えられていく。

森下:イメージする場所場所は点々と離れているんですけど、その間にもたくさんの国がある……それを思うとますますいたたまれなくなってしまいます。最後にはひとつにつながっていく。イメージしたものがどこかでつながる、ひとつにつながるという感覚はとても好きです。少し話は変わるかもしれませんが、私は東京もすごく好きです。よくいろいろなところを探検して歩いてまわるんですが、それをするには東京は、最も面白い場所だと思っています。いろんな表情を持っていて。そしてそれがつながっていることもイメージする。この感覚はうまく言葉では言えません。

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どこか残って、人に伝えたくなるようなもの


秋山:発する言葉やからだの動きで、どんどん空気を変えながら、お客さんをまきこんでいきますよね。舞台上で自分に集中する視線を外して、お客さんにスポットをあてたり、また視線を引き戻したり。

森下:そうですね、裏切ったりとか。次何が起こるかわからない、予測できないことをしてやろうという気持ちがあります。

秋山:どんどん仕掛けたい感じですか?

森下:仕掛けはスキですね。

秋山:事前に作品の構成は決まっていますが、思ってもみなかった展開で、自分もびっくりするような時ってありますか?

森下:あります、あります。それはもう、私の作品というか、私はギャラリーがいてはじめて生きると思っているのですが、お客さんの反応にどんどんどんどん煽られて、そうするつもりじゃなかったけどやってしまったっ!そんな自分にビックリ!ということはありますね。

秋山:自分でも意外なことが起こった方が、今日はよかったという感じですか?

森下:再演などは、自分の中で鮮度を保つのが大変ですが、お客さんの反応を受けてこんなことをやっちゃった的なことは新鮮で、それは毎回、面白く刺激的です。今日もこんな自分を発見!みたいな。

秋山:毎回お客さんは入れかわって反応も変わっていくわけですが、その都度ちがう反応を楽しんでるんですね。

森下:お客さんの反応を受けて、どう返してやろうかというのはやっぱりあります。

秋山:実際見られているのは森下さんなんだけれども、お客さんもその場所にいる以上は、素材で、急に見られる存在になったりしますよね。

森下:安心して見ていられないという感じですか。

秋山:(笑)森下さんが突き破ってくるので、距離をとって見ているつもりだとしても、そうならないんですよ。ぐわっと掴まれてる感じがするんです。見に来たというよりも、参加しに来たという感じ。だからこそ、人にも「体験した方がいいよ」と言いたくなる。森下さんは見た人に何を感じてもらいたいですか?

森下:なんだかよくわからなかったけど、でも魅入っちゃったよ、そう言ってもらえるだけで、そう感じてもらえるだけで十分(笑)。青山の日韓ダンスコンタクトも、何個かある作品の中の一つでしたが、その中でも忘れられないものであってほしいです。面白くなくても、忘れられない作品って、きっとあると思うんですよ。「インパクトのあるもの」ですね。ひたすら同じことをやっていて、「飽きるなーもういいよー」というようなものでも、憶えてたりする。

秋山:しつこくしつこく。

森下:私、「しつこい、くどい、もういい」って言われます(笑)。

秋山:確信が持てる一つの反応ですよね。

森下:どこか残って、人に伝えたくなるようなもの。良くても悪くても。

秋山:めちゃめちゃ前向きですね。でも確実に「次は何をするのかな」「見に行かなきゃ」という気になります。見逃したら損した気分です。

森下:『デビュタント』も「森下チキチキ真樹バンバン」とか、「しっちゃかめっちゃか暴れん坊」とか振り付きで憶えてくださるお客さんがいて、こうでしたよねと、初めて会った方に言われるとものすごくうれしいです。

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場所からふくらむイメージ


『コシツ』©baneto

秋山:森下さんの作品は空間に合わせて、どんどん変化していきます。最初『コシツ』は、「自分の部屋」というコンセプトもありましたが、その狭い空間からどんどん広がっていって「反転」する。

森下:私にとって「個室・固執」は、日常のオアシスで人に見られては困る「癖」や「仕草」も、個室の中で思う存分行い、そこでエネルギーチャージし、その動きを繰り返し繰り返し行うことでエンジンがかかり、個室で固執、さらには外へ飛んでいく。物理的には狭い空間でも私の中ではどんどん空間が広がっていくんです。ふだん家で、夜中にNHK深夜放送を見ていると、世界のどこの国かわからないけど、音楽と一緒に映像が流れている。それをつけてるとだんだんムズムズしてきます。部屋の机を寄せて、動き始めるんです。モノにガツガツぶつかりながら、だんだんだんだん広がっていく(手が動き出す)。部屋ごと世界を旅しているような感じです。そしてしきりがなくなっていく。

1975年生まれ。長い手・足を活かしたムーヴメントと、端正な容姿とはうらはらに陽気でユニークなパーソナリティから生まれるパフォーマンスとがあわさったパワフル、かつ、ちょっぴりクレイジーなダンスが持ち味。04年2月、初のソロダンス作品『デビュタント』(製作:発条ト)が財団法人横浜市芸術文化振興財団賞を受賞。その後、ソロ第2作となる『コシツ』を発表する。ダンス・ワークショップの開催、世田谷パブリックシアター・プロデュースによる演劇作品『雪の女王』(作:H・C・アンデルセン/演出:テレサ・ルドヴィコ)に雪の女王役で出演するなど、活動多数。

Maki morishita on the web
発条ト

インタビュー:秋山暢子(TS)
写真:427
場所:新宿 カフェ・ユイット
日時:15/10/05

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