021

Moodman (DJ) 後半


1

FUTURE SOURCE フュチャー・ソース


POST CARD

SANTIAGO SIERRA

PRIVATE PRESS

DVD-R

COMPLEX


2

サンチアゴ・シエラ、大好きなんですよ。


近藤:音楽以外にも、ポストカードとか現代美術とか、興味の範囲が広いですよね。

ムードマン:サンチアゴ・シエラ、大好きなんですよ。2001年にヘルシンキのARS01という展覧会に参加させてもらった時に初めて見たんですけど、すごいなと。最近ではいちばん共感してますね。

近藤:僕もNYで彼の展示を見たんですけど、鳥肌立ちましたね。すごい広い空間にダンボール箱が並んでて、なんだか妙な気配がするなと思って中を覗くと、人が座っていたり…。

ムードマン:68人で壁支えるとか、ストリートチルドレンの背中に刺青を入れるとかね。

近藤:ほんと、犯罪とアートのすれすれですよね(笑)。

ムードマン:僕、大学時代は、早稲田で美術史を専攻していて、特に日本の現代美術について勉強していたんです。で、クラブで働いて、お金が貯まると欧米をぷらぷらして、各国のレイヴと現代美術展をはしごしてました(笑)。その頃の展覧会でいうと「ポスト・ヒューマン」展がショックだったかな。ローザンヌで見たんですけど、マシュー・バーニーをわりと早めにプッシュした展覧会だったんですよね。ロッククライミングのやつ、びっくりしましたね。たまたまその頃、リー・ペリーが居たりしてて、スイスに。変な記憶として残ってますね。

近藤:周りも音楽以外のことをやっている人って多いんですか。

ムードマン:多い方ですかね。宇川くんとか、イルドーザーとか。

3

プライベートプレスと「孤高の人」


近藤:プライベートプレスというのは?

ムードマン:単純にここ数年は、プライベート盤のレコードなら何でも買ってるんですよ。もうヘビメタでもディスコでもなんでも(笑)。特に2000年を越えたぐらいからかな、ネット上に様々なコミュニティが出来てきていて、マイノリティー同士がつながってきてますよね。それで気づかされるのは、自分が何かにおいてはマジョリティーだけど、別の場所ではマイノリティーであるということ。

表現の場を見渡してもね、やはり似たようなことになっていて、すごいプライベートになってきている反面、以前よりも理解者とのつながりがあり得る。で、そういう状況になってみるとね、今みたいな理解者とのつながりのなかった時代の個人的な作品ってどんなだったっけ、って思ってきたんです。

そこでプライベートなレコードを買いはじめたんです。「孤高」なんですよ、どれも。考えてみると、生涯に一枚しかレコードを出さないで死んでいった人って、すごい一杯いるんですよね。メジャーなレコード会社にも、いた。そういう人の人生を考えるともう、泣けてくるわけです。しかも、それが、もうヘナチョコな音だったりするんですよ。なんか、胸がいたくなってくる…(笑)。

近藤:もう、思わずリスペクト?

ムードマン:ほんと、そうですよ。ジャケットとかも、まじまじと見たりして。サイケとかのプライベート盤だとちゃんと評価もされてるんだけど、よくわからないジャンルだと評価されてないからもう探すの大変なんですよね(笑)。

HIRO:どうやって探してるんですか?

ムードマン:たとえばGoogleに「プライベート」って入れて一個一個見ていって、いけそうなのを全部買う(笑)。安かったらですが(笑)。面白いのはね、そういうの探してると、作家と直で連絡とれる時があるんですよ。「この人、変なのばっかりつくってるな」って探してると、生きていたりして、今だとたいていメールアドレス持ってるから、直でメールができちゃう。いい時代になったなって…。

この間もね、80年代初期にいい感じのエレポップを作っていて、後期にはユーロに走っちゃうあるレーベルがあるんですが、そこの某アーティストを調べてたら、新作を出してるんです。そこですかさず直で買ってみたら、長文のメールが来て(笑)…。僕が「これこれこういう時期のが好きで、貴方が新しいのを出してたから買ったんだよ」ってメールしたら、そのひと、「あの時のオレは、オレじゃない!」って、逆にちょっと怒られちゃったりして、「えーっ!?」て(笑)。褒めたつもりだったのに、「あの時期のオレは売れようとして魂を売ってたっ」みたいな…。でも、ほんと、きりがないんですよね。

4

ネットでつながっちゃう分、面白いのかどうか


近藤:(笑)。音楽も検索して買える時代になっちゃったから。でもさっき「孤高の人がいなくなっちゃった」という話しがあったけど、ネット時代以降の、そこの変化についてもう少し聞かせてもらえますか?

ムードマン:ネットですべてつながっちゃうことが、面白いのかどうかっていう話なんですけどね。孤高の人の孤高の面白さって壊れやすくて。数人に「いいよねー」って言われた途端に失われたりするでしょ、どうしたらいいんだろうと思う(笑)。コミュニケーションが閉ざされてた時代の方が、エグいかもしれないとか思ったり。

あと、レコードに関してはね。もうちょっとで、過去に世界中でリリースされたレコードの総量がネット上で把握されるじゃないですか。今はその過渡期だから凄く面白いんですよね。これまでレコード屋がないと思われていた地域に、実はレコード屋があって、そのレコード屋がネットにアクセスを始めたっていう瞬間ってすごいんです。たとえば、去年ぐらいからペルーのレコード屋がどんどんアクセスしてきてて、ペルーのサイケって(笑)わりと高かったんですけど、それがドカーンと値下がりしたり。そういう風に急激にブワーッといろんな地域の全貌が見えてきてて、たぶん、あと5、6年で世界中のレコードの数量が把握されると思うんですよね。

一同:すげーっ。

ムードマン:ちなみに僕ね、初めての街に行ってレコード屋探すのうまいんですよ。「あ、こっちにあるな」って行くと、必ずあって、みんなに感動される(笑)。一軒見つけたらもう、芋ヅル式じゃないですか。だから街に降りた瞬間に、「こっちだ!」って言って(笑)。

一同:(笑)。

5

POST CARD


ムードマン:レコードの他で集めてるのは、ポストカードですね。

近藤:ウェブのインタビューでも見ました。すごいたくさん集めてるんですね。「Boring Postcard」っていう(退屈な絵はがきばかり集めた写真集/Martin Parr)本があるじゃないですか。あれみたいに出せるんじゃないですか。

ムードマン:出せますね、完全に。何万枚かあるんで(笑)。「なんでこんなのがポストカードになってるんだろう?」っていうのがね、ます面白いんですよね。例えばオイルサーディンの絵葉書とか、なんで絵葉書になってるんだろうと思いますよね。あとはね、絵葉書の数が増えてくるとね、なんか共通してるアングルがあったりするのに気づいたり。観光地の絵葉書なのにね、なぜかちょっとだけカメラが引いていて、退屈そうな観光客までしっかり客観的にとらえてたり。逆にね、絵はがきなのに、観客がピースしてたり…(笑)。最近は、「too much」な絵葉書よりも、微妙な線の絵葉書が好きですね。

近藤:横尾忠則さんも、滝の絵はがきを集めてるので有名ですよね。

ムードマン:そうですね。そう言われると恐れ多いですね(笑)。あとね、使用済みのポストカードは、裏に書いてある文章とかも大体パターンがきまっていて面白いんです。たとえばモーテルの絵はがきがあって、裏を見ると「もう帰ります」とか、「今度は君と一緒に来たい」とか(笑)…え、このモーテルにもう一度来たいの、とか(笑)。そそり方はね、ムード音楽のジャケットとにも近いんですよね。僕の集めてるのは彩色してるもの以降です。つまり60年代から70年代のが多い。

近藤:ニューカラーっぽい?じゃあ、レコードもジャケットで選ぶことも多いんですか。

ムードマン:完全にそうですね。ジャケでわかるんですよ、匂いっていうか。このままMP3とかが主流になってジャケットが消えて行ったら寂しいですね。

6

DVD"Rと海賊版


ムードマン:たぶん今、過渡期なんだろうけど、DVDがすごく焼きやすくなっているから、海賊版がいっぱい出てるんですよね。そのうちに禁止になるだろうけど、今はまだけっこうネットで販売していて。たとえば、今人気のイタロディスコなんかもね、プロモビデオとかけっこうあるんですよ。そういうのを最近よく買ってるんです。面白いのが、たとえば「ミュージックビデオ」とかで検索すると各国のオムニバスDVDがでてくるんだけど、「80’s」て書いてあっても、それぞれの国で微妙に「80’s」の捉え方が違うんです。ロシアのとか見ると「なんで、これが?」ってチョイスが変だったり(笑)。おかしいのがいっぱいあって…。それで一時期はまってて、今はちょっと抑えてるんですけど。

7

今後のこと:Re-edit、サウンド・バー


近藤:ふだんの仕事の方でも、音楽を自分でつくったりもしてるんですか?

ムードマン:つくる方はほとんど、まったくやってないですね。

HIRO:「Re-edit」(曲の一部をリミックスし直すこと)とかはどうですか?

ムードマン:シーナ&ロケッツの曲をリ・エディットさせてもらったことはあるんですよ。でも、それぐらいかな。

HIRO:昔のレコードとかで「ここだけ外せばカッコいいのに!」という曲、いっぱいあるじゃないですか。

ムードマン:この前、プロトゥールス買って、マックに入れたんだけど、またしてもまだなんにもやってないです(笑)。たしかに、Re-editしたい曲はいっぱいありますよね。「ここまでかっこ良かったのに、なんでオヤジ唄うんだ!!」っていう曲が。しかも、朗々と唄っちゃうっていうような曲が。機会があればやってみたいですね。無理かな(笑)。

近藤:他に今後やりたいことって、何かありますか?

ムードマン:サウンドシステムは小さいのでもいいから持ちたいんですよね。ちょっとしたところに移動してパーティーできつようなやつを。

8

地方クラブシーン、RAW LIFE、ヤンキーの未来?


ムードマン:とにかく今、東京はちょっと音のレベルが低いと思うんですよ。

近藤:今、どこがいいんですか?

ムードマン:名古屋のMAGOっていうクラブがすごく音がいいですよ。今、いちばんやりやすいかもしれない。今は、地方の方が元気なんですよね。この間の福岡もけっこういい感じだったし。ネットの影響も大きいかもしれないけど、もはや情報が均一だし。実は車でちょっと行けばとなりの県に行けるし。そういうのが根づいてるから行き来がすごいんですよ。そうやってみんな移動に慣れてきてるから、西海岸にもちょっと近くなってて。ミックスCD聴きながら、パーティーに集団移動するみたいな。

HIRO:逆に遠出するから、わくわくするしね。僕も最近、普通のクラブとかじゃなくて、変わった場所でパーティーをやるのが楽しいなって思ってますね。

ムードマン:ですよね。僕が参加させてもらったのでは、「夢牧場」っていう成田の牧場に倉庫みたいなところがあって、そこで豚さんや牛さんとウェアハウスパーティーやってたり。「イレブン」っていうパーティーが三重でやってたり。この前は滝壺でやってたんですけどね。野球場でやってたり、流れるプールでやってたり…。あと「DKサウンズ」っていうパーティーは、川崎のゴミ処理場でやってたりする。

一同:カラダに悪そー(笑)。

近藤:最近あった「RAW LIFE」(木更津で行われたクラブイベント)も雑誌で見たけど、すごかったらしいですね。

ムードマン:「RAW LIFE」、良かったんですよねー。僕は100円のカップ酒で早々と、撃沈して。駐車場で寝てました(笑)。えらいと思ったのは透(高橋透/DJ)さんが、最後まで起きてたことかな。

HIRO:そういう意味で今、日本は面白いですよね。NYではそういうのあんまりないし。逆にNYでは、ふつうにみんなビルの屋上でやってますけどね。向こうでは音も出せるし。いろんなフロアがあって、ビルからビルへと歩いて行って…。

ムードマン:東京って騒音に敏感でしょ。すぐに警察来ちゃうからね。

近藤:赤坂での「God Father」の時も、何度も止められてましたね(笑)。

ムードマン:あの時も宇川(直宏)くんが止めに来た警察官に向かって「僕の目を見てください。一緒に踊りませんか?」とか言ってて…。「Shall We Dance?」じゃないんだからって(笑)。

一同:(笑)警察官もキョトン、じゃないですか。

ムードマン:結局は、警察官も「いいよ、今日は」ってなったみたいですけど(笑)。「RAW LIFE」の時も、たいへんだったみたいですね。まだいろいろもめてるようなので、あまり詳しくはいえませんが、来年もがんばって欲しいですね(笑)。

近藤:(笑)。でも、ちょっと危険な匂いがすると、余計面白そうに思えるってとこありますよね。

ムードマン:「RAW LIFE」はちょっと危険な匂いが立ちすぎ…かな(笑)。不法集会みたいなイメージになっちゃってる(笑)。音楽的にはかなりピュアなところをピックアップしていて功績が大きいと思うんですけどね。「RAW LIFE」の時はね、お客さんが周りに(グラフィティーを)描いちゃって。ガソリンスタンドを「芸術作品」にしちゃったみたいで。主催者が怒られててかわいそうだった。

近藤:以前にインタビューしたKAMI(TS011)くんも、わかっていながら時々そういう衝動にかられるって言ってましたね(笑)。

ムードマン:意外に思ったのが、木更津ってヤンキーは多いけど(グラフィティー)ライターってあんまりいなくて、落書きはなかったんだよね。

HIRO:逆に、ヤンキーの連中にグラフィティーを広めたらいいんじゃないかな?

ムードマン:日本語では、みんな描いたりしてますけどね(笑)。

近藤:それはカッコいいよね。オリジナリティあるし(笑)。

HIRO:ヤンキーの連中が日本中を変えるかも(笑)。

ムードマン:そういう未来は、わりと近くまできてますよね(笑)。

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interview by:

近藤ヒデノリ Hidenori Kondo
クリエイティブディレクター、CMプランナー
TOKYO SOURCE編集長、季刊誌「広告」編集委員

1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京写真専門学校中退。博報堂に入社後、休職してNY大学芸術学部/ICP修士課程で写真と現代アートを学び、9.11直前に帰国。同社に復職後は、TVCMやウェブなどの広告を制作しながら、個人としても個展・グループ展、展覧会キュレーション、書籍の編集など手法を選ばず表現活動を続けている。ラクダ似な旅好き。(photo: Suguru Takeuchi)
ブログ「TRAVEL HETEROPIA」http://d.hatena.ne.jp/camelkondo/
Twitter@KondoHidenori
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DJ。日本生まれ。 ムード音楽をこよなく愛する男。 '80年代末にDJ活動を始め、 '93年にレーベル[DUB RESTAURANT COMMUNICATION]を立ち上げる。その後、[M.O.O.D.][donut]など、様々なアヴァンギャルド・ミュージックを発表し、国内外で高い評価を受ける。'90年代後半は、DJに専念。 横断的かつ分断的な音楽感で、[低音不敗]、[SLOWMOTION]、[GODFATHER]、[HOUSE OF LIQUID]…などなど様々なパーティーで東京の夜を活性化させる。 '02年末にはミックスCD『WEEKENDER』を発表。なんと2004年はDJを108本もこなすという超人である。

インタビュー:近藤ヒデノリ(TS編集長)
同席:DJ HIROTAKA(monads records)
写真:高田洋三
場所:COQDO RECORDS
日時:2005/12/10

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