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伊藤利江 (陶芸作家) 後半


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展覧会Rie Ito Ceramics:BIRDS」「Rie Ito:Flowers」について


2002年「Rie Ito Ceramics : BIRDS」(graf media gm) photo:yasunori shimomura

サトコ:今まで作ってきて、スランプになっちゃったことって、あります?

伊藤:ああ。あります、あります。花の展覧会(『Rie Ito:Flowers』展/2005年11月5日-2005年12月4日 graf media gmにて)の前なんて全然作れなくて。鳥の時(『Rie Ito Ceramics:BIRDS』展/2005年4月9日-5月12日 graf media gmにて)が私の予想よりもはるかに評判がよくて、それで焦ってしまって。それで、花の展覧会の時は1年くらい前から「展覧会するぞ!」って言われてたんだけど、ほんとに2ヶ月か3ヶ月前くらい前まで何もできなくて。

サトコ:その時はプレッシャーをどうやってはねのけたんですか?

2005年「Rie Ito : flowers展」(graf media gm) photo:ayaka umeda

伊藤:とりあえず手を動かそうと思ったのと、いろいろ見に行こうと思って外に。モチーフは花だったり葉っぱだったりするので、とりあえずカメラを持って比較的緑の多い中之島の方に行ったりして。

サトコ:展覧会の企画は伊藤さんご自身がされるんですか?

伊藤:いえ、grafさんから話が来てって感じです。東京でもやりたいんですけど、なかなか会場が見つからなくって。

サトコ:そこはgrafさんに頑張ってもらって…(笑)。

伊藤:鳥と花も一緒に持っていって。

サトコ:壁一面に鳥とか花を展示するっていうのは伊藤さんのアイディアですか?

伊藤:壁に展示するっていうのは決まっていたんですけど、具体的にどう並べ方るかは、grafさんと直接会場で。最初の私のイメージは、まっすぐ並べる感じだったんですけど、それだと鳥なんで躍動感というか流れの空気感がないから、曲線で流したほうがいいんじゃないかということで。だから最初は全く違ったイメージだったんです。花の時も同じで、最初は床に並べてレイアウトを考えてました。鳥って飛んでるから壁っていうイメージがあるけど、花は床…地面から生えているものじゃないですか、だから結果的には壁面でやったけれど、床でも面白かったかもしれないですね。

サトコ:反響はどうだったんですか?

伊藤:私はもしかしたら鳥の方がよかったと思われるんじゃないかと感じてたんですよ。鳥って自由や平和の象徴であったり、単純にかわいくて受け入れられやすいじゃないですか。でも花は、特に今回私が作った花は良く見るとけっこうグロテスクな感じがするし、嫌いな人もいると思ったんです。アクが強いというか。そういうのもあって、鳥より花の方がイマイチなんじゃないかと思ってたんですけど、案外鳥より花の方がいいという方が多くて、すごく意外な感じでした。濃すぎたかなとか装飾し過ぎたかなと思ったんですけど、鳥の時よりよかったみたいです。

サトコ:花の作品を作っているときは、例えば実際の花のどういう部分を陶芸で表現しようと思って作っているんですか?

伊藤:そうですね、やっぱり花の表面の細かいディティールとか、質感とか観察して。形は今までのようにスケッチを繰り返して単純化させたもので。色や装飾は、実際ありえないものになってますが、それを手掛かりに作っています。

サトコ:形はかなりデフォルメしていますよね。

伊藤:あんまりリアルだったり、抽象的になり過ぎてもなんのことか余計にわからなくなると思って、形はシンプルに花ってわかるようにしてます。

サトコ:スケッチって見せていただくことできますか?

伊藤:ありますよー。これは一番最初のもので、最後にまとまってきたのはここらへん…。表面はいろいろ遊びたかったので試行錯誤してますね。ちまちま書いてるのがすごい好きで。これだと花ってわからないですね(笑)。

亀山:伊藤さんのスケッチって、テキスタイルとかになりそう。

伊藤:装飾は、最近凝ってきたんで、もっとそこを突き詰めて行きたいなと思っているテーマの一つですね。ちょっと自分の得意とするというか、独特なものができたらいいかなと思ってます。

2

MY SOURCE マイソース


大阪島之内

生まれた時からずっと住んでいる場所。

テレビ、ラジオ

宮崎駿さんの「パンダコパンダ」や、「西遊記」が好きだった。

動物

昔から好き。小さい頃は動物関係の仕事に憧れた。

家族

実家の商売の血をしっかり受け継いでいる自覚アリ。

幼稚園

毎日紙の家を作る遊びに熱中していた。


大阪島之内

サトコ:MY SOURCEで島之内を挙げていただいたんですが、島之内はどういう場所ですか?

伊藤:えー、危ない場所ですよ(笑)。今はそうでもないですけどね、昔はやくざ街っていうか、やくざの組が多い街です。よくコワイ車が停まってますよ。

亀山:他に住んでみたいところはありますか?

伊藤:…いっぱいありますけどね。海外とか。自然があるところがいいです。窓を開けたら緑が目に入る環境とか、すごい憧れる。大阪芸大が割と山の中で緑がたくさんある場所にあったんで。ここ(島之内)は全然だから、田舎に行きたい願望はあります。住みたいか?といわれると別ですが。

サトコ:島之内に住んでたからこういう作品が生まれたんだな、っていうのはありますか?

伊藤:ああ、島之内に住んでて時々田舎に行ってたからこういうのができたのかもしれないですね。ずっと自然のあるところにいるんじゃなくて、ちょこちょこ田舎に行っていたのが逆にこういう作品につながったのかも。

サトコ:見たものがすごく消化されている感じがしますよね。

伊藤:ああ。ずっと田舎にいたらこういう形にならずにもっとシャープなものになったかも(笑)。

テレビ、ラジオ


動物

サトコ:ほかに挙げていただいている“テレビ”に関しては。

亀山:今まで歴代で見た中で好きだった番組はなんですか?

伊藤:「パンダコパンダ」とか。宮崎駿さんの作品です。パンダの親子の話で、街が洪水になるんですけど、それがすごい怖くて。なのに潜ったり泳いだりするんですよ。水の透明な感じが印象的で好きです。あとは「西遊記」とか。

サトコ:けっこう動物モノですね?

伊藤:確かに動物モノですね(笑)。

亀山:動物は全般的にお好きなんですか?

伊藤:好きですね。小さいときね、小学校のとき、動物関係の仕事をしたいって卒業文集に書いたんですよ。ペットショップとか、獣医さんとか。その時からですね。

家族

サトコ:家族っていうのは?ご家族でこういうモノづくりをしてらっしゃる方はいるんですか?

伊藤:いや、全くですね。実家はスーパーを経営してるんですけど、もう、商売人って感じ。家が商売をしてるっていうのが影響してるんじゃないかなって思うのが、私自分では思ったことないんだけど、人から言わすとすごい商売上手らしくて(笑)。人の好きそうなものを作るとか、作る作品がツボをついてるってよく言われます。あとは、セットで買わそうとするとか(笑)。

亀山:ご家族の方は伊藤さんの作品を見て何か言ったりするんですか?

伊藤:言わないですね、全然。言わないし、興味ないんじゃないかな(笑)。何か作ってるー、みたいな。ほんとに自由にさせてもらってます。

サトコ:陶芸家になる!って言ったときにご家族はどんな反応だったんですか?

伊藤:実は「陶芸家になるぞ」とは言ってないんですよ(笑)。じわじわと、もうそれしかできへん、っていうところまで持ち込んだっていうか(笑)。でも、何も言わなかったです。

幼稚園

亀山:“幼稚園”については最初でも一度話が出てきましたよね。創作的な活動に力を入れる幼稚園だったって話ですけど、それはたまたまそういう幼稚園だったんですか?それとも親の方針とか?

伊藤:ああ、特にそういう方針だったのではなくて。たまたま。卒業制作以外にも、私毎日おやつの時間を返上して紙で家を作って遊んでいましたね。ぺらぺらの紙で(笑)。屋根も、ちゃんと円に切って円錐に組み立ててつけたりして。先に中に椅子とか、机とか、絵も小さいの貼って、それから屋根をつけて。それを毎日作ってました(笑)。

サトコ:それ、できあがってから遊んだりするんですか?

伊藤:もう、作ってそのまま(笑)。

サトコ:幼稚園にして、かなり完璧主義的な作り方ですよね?(笑)

伊藤:そうですね。窓も切り抜いたり、のりしろもつけたりとか。おやつより、家。でも、それでも先生は何も言わなかったですね。幼稚園時代に好きだったことって、いまだに好きかもしれない。鳥の世話もしてたし(笑)。

サトコ:そこらへんに実はいろんな源流があるんですね。

3

FUTURE SOURCE フューチャーソース


自分

自分が一番分からない(笑)。

友達

一番身近なライバル。

自然

自然があるところに住みたい。窓を開けたら緑が、とか。

陶芸教室

生徒さんたちの作るおおらかな形は本当にうらやましい!

自転車

市内の移動はもっぱら自転車で。


自分

サトコ:フューチャーソースでは“自分”を挙げられてますね。

伊藤:もうね、”自分”が一番わかってないと思って(笑)。いつも思います。客観的に見てることが多いし。「次どうするんやろ」とか。作品もそうかもしれないですね。人事のように見ているというか。作っているときは楽しくて一生懸命やるんですけど、できあがってしまったら、満足。それでけっこうしらっとしてしまう。

亀山:できあがったものよりも、やってる工程が楽しいのかも。

サトコ:できあがったものにはあまり執着はないんですか?

伊藤:出来上がったものに執着するというよりも、作ってる時に愛着を感じて作ってると思います。作っているときは本当にもう没頭して、手をかけて作って。よしよし…って感じですね。アトリエにこもって朝の4時くらいまで作り続けたりします。

友達

サトコ:他の作家さんで、憧れていたりライバル視している方はいますか?

伊藤:ライバルは、一番近い人たちで友達かな。陶芸やっている友達が多いので。皆作品が面白いし、私ももっと頑張らないとと思うことはたくさんあります。

陶芸教室

亀山:“陶芸教室”も挙げられてますが。

伊藤:これは、さっき話した、生徒さんたちの作るおおらかな形。本当にすごく良くて、うらやましい(笑)。

自転車

サトコ:“自転車”は何ですか?

伊藤:自転車は、もう私の足ですから。もう市内は自転車で。エコでしょ?…車運転できないんですけど(笑)。大阪城とか、中之島周辺の公園とかによく行きます。近場で緑のあるところを散策しに。30分もあればだいたいどこでも行けますよ。

サトコ:さっき、スケッチをするときに写真も撮るっておっしゃってたんですけど、写真は花の写真なんかを撮るんですか?

伊藤:そうです、帰っても描けるように。

サトコ:もっと遠く、旅行に行かれたりすることは?

伊藤:旅行、行きます。好きです。アジアが好きで、アンコールワットに行ったんですけど、ヒンドゥー教の神話のレリーフを見ても、すごくふくよかでいいなって思いました。

サトコ:ああ。そういうのに伊藤さんの作品は通じてるんですね。

伊藤:最近しばらく旅行に行ってないんですけど、また行きたいですね。

サトコ:行ったあと、作品は変わります?

伊藤:なんか、「やるぞ」感が生まれますね(笑)。帰ってきて自分の作品の見方が変わっってイマイチだな…と思ってたところがよく見えたり。作品だけでなくって、いろんなものの見る視点が変わって、新しい発見だったり。それが作品のヒントになったりとか。

4

1つやるとまた2つ、やりたいことが次々出てくる


サトコ:今自分で作品を作っていて、課題だなと思うところ、もっと自分に必要だと感じていることはありますか?

伊藤:釉薬かな。形は、やろうと思ったらその場の試行錯誤でできるんですよ。でも、釉薬は窯の力も借りないといけないから。今はレパートリーが少なくて。釉薬って、ちょっとした厚みや温度の違いで色や表現が全然違ってくる。色味はぱっと見一緒やけど、配合を少し変えるとちょっとした曇り具合とか、溶け具合が変わってきて、もうそうなると何がいいんだかわからない(笑)。できたピースでもう判断するしかないんですよ。

亀山:どういうものを求めているんですか? 色なんかに関して、自分なりの基準や理想はあるんですか?

伊藤:作品によりますね。もちろん好きな色もありますけど、私の好きな色と質感でたくさんテストピースを作って、その中からモチーフに合うものを選びます。質感は窯の温度で変わってくるので、でき上がってから、案外いいのができたというのもあります。裏切られることの方が多いですけど。1つやるとまた2つ、もう1つやるとまた2つっていう感じでやりたいことが次々出てくるので、やりたいって言ったら本当に色々あります。

サトコ:知れば知るほど…ですね。研究って、具体的にはどうやってやるんですか?

伊藤:ちょっとだけなんですけど、見ます?こうやってピースにつけて、実験してみるんです。

亀山:面白い!色見本帖みたいなものですね。他の人の作品とか見て、これはどういう配合だなーってわかってりします?

伊藤:わからないですねぇ(笑)。それがわかればいいんですけど。

サトコ:そういうのって、作家さん同士で情報交換したりしないんですか?

伊藤:えー、しないです(笑)。内緒。

亀山:やっぱり一人で追求してく孤独な世界なんだ。

伊藤:そう、本当に孤独ですよー。でも孤独と言いながら、それが好きやったからやってるんだと思います。一日中誰とも喋らない日とかありますもん。ひきこもりです(笑)。

亀山:最近気になることやモノはありますか?

伊藤:英会話ですかね。本当喋れないんですよ。こないだ展覧会をしたときに、イギリスの「Wall Paper」という雑誌の方が取材に来てくれたんですけど、通訳の方に向かってしゃべっているのが申し訳なくて。

亀山:バンコクでの展覧会もありますよね(『束の間美術館/ソイサーバイ』/2006年2月11日-17日 バンコク Silpakorn Universityにて)。

伊藤:そうです。そういうのもあって、英会話。単純ですが。

サトコ:自分の作品が海外で展示されるのはうれしいですか?

伊藤:うれしいですね、やっぱり。注文してくださったりすると、うれしいです。

亀山:海外からも注文が来たりするんですか?

伊藤:ありますね。イギリスから照明の注文が来たり、サンフランシスコのお店で置かせてもらったり。けっこうね、作品はいろいろなところに行ってるんですけど。

亀山:今度は自ら赴いて、しゃべったり…。

伊藤:そうそう、そうなんですよ!

サトコ:他に今後の展望などはありますか?

伊藤:もっと作品の数を作りたいです。私、あまり手が早くないので、全く何も作らない期間とかもあるんですよ。そういうのをなくして、もっと色んなものを見て作っていきたい。今まで使っていない、ろくろを使っても、自分の好きな形ができるやり方があるんじゃないか、とか。欲張りやからどっちもやりたい。彫刻も、器も。

サトコ:ぜひ東京での展覧会も実現させてください!今日はどうもありがとうございました。

陶芸作家
1974年生まれ 大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修了
<主な個展>
1997年 INAXガレリアセラミカ(東京)
1998年 gallery EARTH VISION(東京)
1999年 lisn(京都)
2000年 salon sui(金沢)
2001年 INAXガレリアセラミカ(東京)
2002年 「Rie Ito Ceramics : BIRDS」展 graf media gm(大阪)
2005年 「Rie Ito : flowers」展 graf media gm (大阪)

インタビュー:サトコ(TS)、亀山瑠衣子(TS)
写真:サトコ、亀山瑠衣子
場所:大阪 島之内
日時:04/02/06
リンク:graf

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