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munetaka tokuyama (フォトグラファー) 前半


TOKYO SOURCEを始めてちょうど2年。インタビューを続けるうちに、「これって様々な人に出会う旅のドキュメンタリーなんだな」と、思うようになった。その道中で思いもよらぬ反響を多方面から頂いている。

トクヤマさんもその1人だった。NYからの突然のメール。WEB上で彼の写真を見せてもらった。モデルの大胆な動きの一瞬を切り取ったスポーティでスタイリッシュなファッションフォトの数々。僕らはファッションの分野を取り上げたことがなかったこともあり、帰国する彼のタイミングに合わせて会うことにしたが、正直、バリバリに堅いファッションの専門家だったらどうしよう、なんて不安もあった。しかし、現れたのは、きさくでオモロイ、まさに大阪のアンちゃん。すぐに打ち解けて話すことができた。

やる気も人生の目標もないままNYに行ってしまったという彼だが、生来持っていた関西人の生命力というか嗅覚というか、自分の感覚を信じてやり続けた結果が全米ファッションフォトの新人賞受賞という快挙に繋がる。作風もまた、彼の動物的な勘のなせる業なのだろうか、風を巻き起こす髪のムーブや、空中でふわりと止まった身体を見るのは理屈を抜きにして心地いい。やはり美しい身体の動きは快なのだ。

情報とテクノロジーの時代だからこそ、自分の血の騒ぎと皮膚のざわめきと身1つで未来を切り拓く人を取り上げたいと思う。トクヤマさんはまさにそんな人だ。やはり、王道ではなく“周縁”にいる人間こそ新しいことを始められる。ファッションフォトグラファーらしからぬ彼のソースを聞いているとそんなことを思うのだった。

米田知彦(TS副編集長)

1

瞬間に対し深く掘り下げていく


cmunetaka tokuyama

近藤:トクヤマさんの写真って、アップルのiPodのCMとかに世界観が近いですよね。ムービーもやるんですか?

トクヤマ:モデルをよく動かすから、みんなにそれ言われるんですよ。でも、ムービーはやったことないですね。「やってみたら?」って言ってもらうことありますが、恐れ多いし、もっとファッションに落としたり、もっとスポーツビジュアルに落としたり、もうちょっと今のやり方を昇華させていこうと思ってます。僕は基本的に、ファッション写真を見るよりも、スポーツ新聞の1面の写真を見るのが好きなんですよ(笑)。スポーツ新聞の1面って、何か、ちょっと変じゃないですか。でも、僕はああいう写真の方がファッション写真よりもカッコいいと思うんです。だから、僕は動きの中で撮るというのがすごく好きなんですよ。

米田:スポーツの動きって、理にかなっているから美しいというのもありますね。

トクヤマ:そう。ありえない。自分考えてオシャレに動かしてもできないっていう写真を、今は瞬間瞬間で撮ってるんです。それがすごくいいなと思ってる。

デジタルが普及するにつれ、1つ1つの瞬間がどうでもよくなってきている気がするんです。写真を撮る事が以前よりも簡単になりましたよね。でも、デジタルで便利なら、もっとその瞬間に注目して、良いものを撮った方がいいと思う。デジタルだから撮ってすぐモニターでそれを見て簡単にOKを出すんじゃなくて、デジタルで便利になったからこそ、もっとその瞬間に対して深く掘り下げていった方が、デジタルの特性を巧く生かせるんじゃないかって思っています。

近藤:デジタルだとすごくいっぱい撮れて、すぐチェックできる。トクヤマさんが言おうとしているのは、瞬間をいっぱい撮ることができるから、より瞬間に集中できるってことですか?

トクヤマ:僕は、モデルをものすごく速く動かすので、フォーカスとか、ちゃんと撮れてるか不安なんですよ。だから、フィルムの場合でもたくさん撮ります。絶対に撮れてるってところまで撮るんですけど、デジタルは撮れてるって思った時に、すぐにみんなの意識が次へと行ってしまう。フィルムでやった場合だとまだ途中の段階でしかないのに、デジタルで撮っているとモニターですぐ確認できるから、そこからもう1つ深く掘り下げたり、もうちょっと粘ってみようという意識が薄れてしまっている。色んな部分が中途半端で終わってしまうと思うんですよ。

米田:フィルムの時だと撮れてるかどうか分からないから、瞬間が撮れていると確信できるまで逆に深く考えてやりますもんね。

トクヤマ:はい。それだと、上がったコンタクトシートを見た時に喜びもあるし、「想像以上にすごいものが撮れたな」って奇跡もあるんです。デジタルでは想像以上というものを感じる事ができない。デジタルの便利さも捨てがたいのは正直なところですが、デジタル撮影になるとスタッフがモニターに集まって、撮影中のモデルを見なくなるんですよ。やはり、モデルも人に見られてモチベーションが上がると思いますね。

2

基本は、シンプルに人を動かす


ドイツ人映画監督のヴィム・ヴェンダース
cmunetaka tokuyama

近藤:(ポートフォリオを見ながら)これ誰でしたっけ?

トクヤマ:ヴィム・ヴェンダースですね。

米田:いきなり巨匠ですねぇ。

トクヤマ:巨匠ですけど、いい人でしたよ(笑)。

米田:そして、ヴェンダースの次に来るのがガッツ石松という(笑)。でも、ガッツさん、『ブラックレイン』も出てるし、ハリウッドスターですよね。

近藤:こんな俳優いないからね、アジア圏でも(笑)。

トクヤマ:誰かが言ってましたよ。“リビング・レジェンド”だって(笑)。

米田:ポートレイトは、基本デジタルなんですか?

ガッツ石松
cmunetaka tokuyama

トクヤマ:ケース・バイ・ケースですけど、ポートレイトはフィルムでやることの方が多いかもしれない。デジタルは特性を生かして使ってるという感じです。ポートレイトを撮る時はモデルであろうとヘアもメイクも何もしないんです。真正面にその人の前に立って逃げずに本当にシンプルに撮る方が僕はやりやすい。でも、怖かったり、ビビったりするんですよね。

米田:ポートレイトは怖いってよく言いますよね。

トクヤマ:怖いんですよ~。やっぱり人が目の前に立ってると(笑)。たまに特殊な人の目の前に立ったら、金縛り状態になります。でも、僕がビビってる顔を見せたら、相手も笑ってくれるんですよ。「緊張するなよ」って。その時を撮ったら、それが正直なものだと思うんですよ。

近藤:カメラ越しでも相手は気付くんですね。

トクヤマ:はい。英語を噛んでしまったりとか(笑)。リアルな人を撮る時にいつもモデルにやってるように「ビューティフル!」とか言ってしまうと、「俺、男なんだからそんなこと言うなよ」って言われたり(笑)。でも、自分の等身大のままで、向こうに勝とうと思うのではなく、目の前に立った自分はこれでしかないからって開き直るしかないですね。

ガッツ石松さんはすごく面白いかったですよ。僕が緊張してたら、いきなり、「OK牧場!」って本当に言ってくれましたから(笑)。「好きな数字はラッキーセブンの4だ!」とかね(笑)。そんな場面を撮る。僕も嬉しいし、向こうを「若いから、こいつ助けてやろう」って気分に持っていくのも、フォトグラファーのスキルだと思うんで。

僕の場合対抗してたらダメなんです。ケンかになる。僕ってたぶんそういうタイプなんですよ。対抗せずに人の傘に入って、その中で……

近藤:母性本能をくすぐるタイプなんだ(笑)。

トクヤマ:そう。「この野郎、お前、飲みに連れて行ってやるよ」みたいな(笑)。カジュアルな部分で、動きがあって元気があるっていうのが僕のスタイルなんで、やっぱりコンセプチュアルじゃなくて、シンプルで強いものが好きなんですよ。

3

時代の流れにハマった


cmunetaka tokuyama

近藤:動きがある写真のモデルって、全部がアスリートではなくて、ダンサーもいたり素人もいたり、という感じですか?

トクヤマ:基本的には皆、普通のモデルですけど。みんなバックグラウンドがあるんです。

近藤:特殊なモデルを集めてるわけではない?

トクヤマ:はい。誰にでもこういう動きはできるというか、歩き方や話し方がみんな違うように全く別の物に発展するんです。でも基本的に僕のスタイルはシンプルに動かすということを大事にしています。

米田:例えば、スタジオに呼んだ時に、何となくこういう動きを撮るというのは決めてるんですか?

トクヤマ:出来ればキャスティングの時点でモデルのバッググラウンドを先に聞いておいて、例えば、それがヨガだとしたら、その写真を探すんですよ。Googleのイメージ検索とかでたくさん出てくるじゃないですか。それで同じような感じでやってもらう。でも、その通りにはならないし、それが面白かったりもする。

近藤:じゃあ、いくつかサンプルの動きのパターンを探しておいて、それを見せて撮ってみて、それで違うようになっても、これ面白いじゃんっていう。

トクヤマ:完全に決めて撮るのではなく、現場で出てくる、その人ならではのことっていうのがたくさんあります。だから、構図を決めて、「これが撮れてないからダメ」、というのではなく、「これをこの子にやったら、化学変化でこうなった」、というのはとてもいいことだと思うんです。ただ単に構図を決めてその通りにするのは、誰でも時間をかければナンボでも出来る。

米田:僕も仕事でラフや絵コンテ書くんですが、撮影日のヴァイブスはまた違ったものになってしまう。それでプランをひっくり返しちゃうことも多い。現場で、その時に出てくる偶有性みたいなものをパッと瞬間的に捕まえられるかどうかが、フォトグラファーの勝負じゃないかって話をよくしますね。

トクヤマ:本当にそうですよ。結局、作り込んで人からやれって言われたことは時間とお金をかければほぼ誰にでもできる。だから、フォトグラファーって、自分のスペシャリティーを持ってたり、幸運な瞬間を撮れる確率を上げられるのが実力だと思います。

米田:今、アメリカも日本も、動きのある写真は非常に多くなりましたよね。

トクヤマ:そうなんですよ。僕が今やってることって、たまたま時代の流れに乗っていて、ファッションでもヨージヤマモトが『アディダス』と、アレキサンダー・マックイーンが『PUMA』とコラボレーションしたり、そのキャンペーンを制作したり、そういうのがキテる中で、ちょうどハマったのは良かったですね。

米田:前サッカー日本代表監督だったトルシエの通訳をやってたダバディーさんが関わってる雑誌ってあるじゃないですか? 以前は『FORM』っていう名前で、今は『SPORT LINE』というのかな。あそこなんて、まさにド真ん中ですよね。

トクヤマ:俺、あそこの編集長と今メチャクチャ仲いいんですよ(笑)。

米田:やっぱり! 『SPORT LINE』だったら絶対使いますよね。あの雑誌ってアパレルブランドのグラビアもあったりしますもんね。

スポーツをテーマにしたファッション・ビジュアル誌。
06年7月よりフローラン・ダバディが副編集長を務めた雑誌『FORM』がリニューアルした『SPORTS LINE』。

トクヤマ:俺も日本に帰って来ている時に書店で『FORM』を見かけて、『FORM』だったらいけるなって思ったんですよ。それで、すぐに本屋から電話して…。今は、使ってもらえるようになったんです。素性の全く分からない僕に彼らは沢山のチャンスをくれたんですね。『SPORT LINE』はスポーツ系だけど、ハイファッションでもハマるとは思うんで、今後もやっていきたいですね。

近藤:ところで、この『avant guardian賞』って、どういった賞なんですか?

トクヤマ:若手ファッション写真家の登竜門って感じです。実際は賞をもらっただけで、何のサポートががある訳でもない。新人賞を取っても上にはものすごい怪物みたいな人間がいっぱいいるし。でも、NYの業界の人は皆この賞を知っているし、人と話す時のネタにもなるし、説明しやすいし、獲れてなかったら厳しかったかもですね。

近藤:じゃあ、それがファッション写真をやってる人のとりあえずの目標なんですね。

トクヤマ:アメリカ、カナダの新人や若手にはそうでしょうね。北米全土のファッション写真の新人賞なんで。今回は8人選ばれたんですが、ジャッジする人が『ニューヨーク・タイムズ』の編集長だったり、※『アート・アンド・コマース』のフォトグラファーだったり、すごく有名なエージェントの社長であったり、クリエイティブ・ディレクターだったりするんですね。『YOUNG GUN』って、ADC賞にあるんですが、それに近い、若手のための賞ですね。賞を獲れたことで、また次にいけるし、新しい目標が持てましたから。

※『アート・アンド・コマース(Art + Commerce)』:ニューヨークを拠点にアーティストの制作活動をアートとコマーシャルにおいて支援するために1980年代初期に設立されたエージェンシー。メイプルソープなどを抱えていた。

米田:反響はどうですか?

トクヤマ:写真業界誌の『picture magazine』に取材受けたり、『LE BOOK』にコンタクト先を記載されたり、スタイリスト、ヘアーメイク、アシスタント、そしてレタッチャーから売り込みのメールがたくさん来るようになりました。あと、ヨーロッパのフォトエージェントからメールが来たりしましたね。

4

躍動感を捉えるために自分も動く


cmunetaka tokuyama

近藤:動きのある写真って自分が動きながら撮ってるんですか? それとも三脚で構えてる感じ?

トクヤマ:三脚は使わないですね。自分もモデルに合わせて反射的に動かないとダメなんで。モデルが動いた時にピッ、ピッ、ピッって。

近藤:どういうカメラで撮ってます?

トクヤマ:35mmのデジタルカメラで。最初はRZでやってたんですけど。

近藤:あぁ、RZ重いでしょ?(笑)。

トクヤマ:あれはあれで面白いんですけど、躍動感というか、ブレようが何しようが相手が動いてるものに対して自分が止まってたら、やっぱりちょっと静止感みたいなのが出てきてしまう。だから自分も動きながらやりますね。

近藤:日本のカメラマンって、上田義彦さんにしろ、瀧本幹也さんにせよ、わりと三脚立てて構図を決めて待ち構えて撮るみたいな静的な人が多くて、反射神経で動的に動きを捉えるって少ないんじゃないかな。

トクヤマ:ある意味、僕は適当なのかどうか分からないですけど、ライティングをガチガチに作らない。作ってしまうと、モデルが自由に動けるエリアを限定してしまう。ライティングも大事ですが、写真って、やっぱりその瞬間なのかなって思うんです。

米田:こういう動きがある写真を撮り始めたキッカケはあったんですか?

トクヤマ:最初は普通に見よう見まねでオシャレなファッション写真を撮ってました。でも海の中に自分が持ってきた池の水を入れてるような感じで…。良い服と良いモデルがいたら、誰でもある程度は撮れるし、みんなほぼ一緒に見えてしまう。

じゃあ、もう上品にならずに、はっちゃけてやろうと。モデルがいたら、ポーズも何も考えずに、「その辺で好きなことやってくれ」と言って撮り始めた。すると、そこで出てくる幸運な瞬間みたいなものがあって、「このスタイルでやっていこう!」と思ったんですね。そこでブックを全部作り変えたんです。それに自分は元々オシャレにファッションに、っていうタイプではないんですよね(笑)。

5

目的もないまま渡ったNYで写真を始める


目黒・近藤宅にて。米田携帯で撮影。

米田:トクヤマさんがNYに行くきっかけは何だったんですか?

トクヤマ:大阪にいた時にやりたい事も目標も何もなかったからですかね。

米田:じゃあ、NYには語学学校に行くために?

トクヤマ:いえ、全く何も考えてませんでした。っていうか考えたくもなかった……。語学学校には一応行ったんですが、高校卒業する時に友達と進路どうするのって話しになるじゃないですか。みんな専門学校や大学に行ったり、就職したり。でも僕は何もしたくなくて、適当に友達に「アメリカに行く」って嘘をついたんですよ(笑)。でも元々そんな事全く思ってなかったんで、結局21歳まで行かなかったんですけど。僕って今も本当は家から片道1時間以上掛かる所に行くと何故か不安になる人間なんです(笑)。

でも、次の日から友達に会えば、「お前いつ行くねん?」って言われて、最終的には僕の周りの人間全てが会えば常に「お前いつ行くねん?」って言うようになってしまって。それで、いい加減しつこいから行くことになって……。当日、関西空港で号泣ですよ(笑)。NYに夢も希望も友達もなかったんで。メチャクチャ怖くなって、ゲート前で粘ってたら、見送りに来てたオカンに「おい! お前しつこい。早く行け!」って言われても、「怖い、怖い」って。友達みんなドン引きでしたね。恥ずかしかった。結局、NYに行っても最初クズみたいな生活してて、911が起こって友達がみんな帰ってしまって、やる事がなくなってしまって、「これじゃダメだ」って思ったんです。

それで、著名なフォトグラファーのエージェントにメールしてみた。たまたまその次の日にそのフォトグラファーに会えて、タダでもいいから働かせてくれって頼み込みました。何か食べていく道を見つけたかった。そこからですね。

近藤:そもそも写真に興味を持った理由は?

トクヤマ:NYに日系のファッション系のプロダクションがあるんですけど、そこの社長さんにすごく可愛がってもらったんです。そこでファッションショーの制作やイベントの手伝いの仕事してたんです。バックステージで働く事もあって、そこでヘアーメイクの人と友達になって。段々ファッション関係に興味を持って……

近藤:何となく、そっちの世界にいったんですね。

トクヤマ:そうですね。だから、そういう人たちと作品撮りをするのも簡単だったし。

近藤:そのプロダクションの人と知り合ったのは全くの偶然?

トクヤマ:偶然でしたね。NYで何かしなきゃダメだって意識だけは強かったので、面白そうな匂いのあるところに常に電話して、「何も知らないですけど、タダで働きます」って言ったら、結構どこでも出入りできましたね。

NYに、あるファッションデザイナーの方がいらっしゃって、僕がその人の事務所の棚とか作ったり、展示会のために重いもの運んだりしてたら、「トクヤマ君、こういう人がいてるから」って、そのプロダクションの社長を紹介してもらえて、そっからまた繋がっていった。

僕は恵まれましたね。そうじゃないと今はなかった。『FIT』にも通ったんですが、教室で何人かの生徒と一緒に同じ写真の勉強している事が自分の中で意味が分からなくて、すぐに行かなくなりましたから。

6

マイソース


スポーツ新聞

ファッション写真よりも変で好きなんです。

水商売

夜の世界で色んな事を勉強できました。

大阪・生野区

生野とかで生き延びてるおっちゃんが、すごく面白い。

ニューヨーク

日々いいものを見るチャンスがある。

高杉晋作

「おもしろきこともなき世を、おもしろく」って言葉が好き。


スポーツ新聞、水商売、生野区

トクヤマ:僕、15歳から年齢ごまかして水商売してたんですよ。それで人間の泥臭さみたいな、もう夜の世界って…。でも、色んな事を勉強できました。

近藤:大阪のどこで?

トクヤマ:生野区です。

近藤:あぁ、コテコテの場所やね(笑)。僕も大阪、心斎橋の裏側の堀江ってとこに住んでた時期があるから分かりますよ。

トクヤマ:中学もすごくガラの悪いところで。いいところで育ってきてないんですよ(笑)。だから、生野区の街がソースだったりする。それに、ああいう生野とかで生き延びてるおっちゃんって、すごく面白いんですよ。

NY

トクヤマ:それから、NYにいることもやはりマイソースには入りますね。NYという街に特別インスピレーション受けるわけではないですけど、日々いいものを見るチャンスがある。クオリティーの高いものを簡単に見れるから、自然に自分の中に入ってくるものがたくさんある。特定の何っていうよりも、NYの土地にいてること自体に意味がある。

色んな雑誌や本を見るために、日本だったら洋書屋さんに行かなくちゃいけないけど、それって手間じゃないですか。NYだったらそこいらの雑誌屋さんにに行ったら、タダでイスが置いてあって世界中の雑誌を読める。『ユニバーサルブックストア』とかね。NYにいるだけで、いいものを安く手軽に自分の中に入れることが出来るんです。

高杉晋作

トクヤマ:写真とは全く関係ないんですけど、明治維新が好きなんです。高杉晋作とか、ああいう少し狂った人が好き。彼の「おもしろきこともなき世を、おもしろく」って言葉があるんです。世の中が面白くなかったら自分で面白くしようっていう。

近藤:まさに俺らも、東京の未来を“面白くする”っていうコンセプトでやってるんですよ。未来を“良くする”じゃなくて“面白くする”っていうのが重要なんじゃないかなって思って。

米田:良くするって言うと、なんか押し付けがましいことになっちゃうし、誰かが作った規範に照らさなきゃいけないような束縛感があるというか。

トクヤマ:“面白さ”って色々あるじゃないですか。それは自分の形でいいと思うんです。明治維新って、その面白さに色んな形があって、紆余曲折あって、死んだ人も面白さを自分自身に持ってて、そのためにやっていたわけだし。

でも、海外に行ったら…もう馬鹿なんですけど、侍とかそういうの好きになるんですよ(笑)。時代劇とかに急に目覚めて(笑)。元々、高校時代から『竜馬が行く』は読んでたんですけど、もっと他の人を知りたくなって。おかしいですよね、日本で生まれ育ったのに。

おばあちゃん

トクヤマ:実はうちのおばあちゃんって“拝み屋”なんですよ。

米田:“拝み屋”??

トクヤマ:大阪の市議会議員とかがいきなり来るんですよ。占い師、まじない師じゃないですけど、僕が小さい頃からどっかからおばあちゃんに会いに来るんですよ。だから、僕の中ではおばあちゃんって、結構デカいですね。

僕、宗教は持ってないですけど、おばあちゃんは僕の神なんです。彼女が人を治せたり、人の未来が分かったりするのを自然に見て育ちました。それにおばあちゃんに会いに来た人たちが「お孫さんですか?」っておこづかいくれるんですよ。おばあちゃんが誰かに関わったら、僕はこづかいをもらえた。だから、おばあちゃんは確実にソースです(笑)。

こうやって自分のソースを並べて見ると、何で僕、写真をやっているのか、不思議ですよね(笑)。

1978年大阪生まれ。2001年よりニューヨークに移り、フォトグラファーのアシスタントを始める。2005年より自身の作品を撮り始め、2006年、全米のファッション・フォトグラファーの登竜門である『Surface Magazine's Avant Guardian Isuue』に選出される。
MUNETAKA TOKUYAMA official web

インタビュー米田知彦(TS副編集長)、近藤ヒデノリ(TS編集長)
写真:munetaka tokuyama
協力:宮崎岳文、坂口惣一、刀田聡子
場所:東京・目黒・近藤宅
日時:2007. 3.10

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