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松根無中 (在家) 後半


1

あるがまま/Be Just be


近藤:今の師匠との出会いが大きかったんですね。

無中:そうですね。僕もその3ヶ月くらい前から、スピリチュアルな目覚めみたいなのがあって、上がったり下がったりしてた時期で、師というか、パートナー的な人がいて欲しいと思っていた時期にちょうど師匠との出会いがあったんです。師匠も、「僕に呼ばれてロサンゼルスに来たんだな」って言ったり。僕も会った時には、「この人はそうなんだな」みたいな。

近藤:なんか、自然な感じですね。

無中:だから、「物事なんてなるようになる」みたいな感じでいるんだろうね。そう思わない時も多いんだけど。でも、なんとかなるし、起こる時は起きるし、起きない時はどんなに動いても起きない。僕も師匠も「あるがまま」をスローガンにして、「Be just be」って英語では言っているんですけど。出来る限り、自然体。もがきながら、もがきながらも、少しずつあきらめの境地というか…。

近藤:「無為自然」って、何にもしないで自然にいるってことみたいですけど、やっぱ、もがいた方がいいんですか。

無中:自分の心に問いかけて、自分がその瞬間に本当にやりたいことをやる。「わくわく」というのがスピリチュアルな言葉にあるんです、「excitement」という言葉。自分の心ときめいてやりたいことをその瞬間にやる、それが一番自分との繋がりで、それが一番自分の表現である、それを形としてアートなりDJなり料理なり、仕事ということでやっていけば、それは自分にも、人にも喜びを満たすことにもなって、自分の本当の人生の役割を果たす事が出来るんですね。

だから、もがきたいと思ったなら、とことんまで、もがけばいいじゃないか。泣きたい時は泣きましょう、と。それが自然なんじゃないかなと思いますね。そうするために、みんなで何かを一緒にやりましょう、というのが生きてることに繋がる。
今までは僕と師匠が、人から声をかけられるの待ってたんですけど、これからは、「こういうことしたいんだけど、やらない?」って。「みんなで一緒にやろうよ」ってのが最近、僕の中ではブームですね。子供見てるとそうなんだよね。大人はなかなかやれないけど。バリで道あるいてたらね、「ハローハロー」って子供が声をかけて来て。それを見ていて、「あ、そっか」って。とりあえず、声をかけてみる。「やらない?」って。

近藤:ワクワクするのって大切ですよね。分からないけど、なんか楽しそうだなって感じありますね。

無中:それでいいと思うんだよね。心のトキメキって、理屈じゃないから。それで充分じゃないかな。そんなにたいしたことじゃない。

2

ギャラリーをお寺にしちゃう?


無中:今、師匠と話してるのが、アメリカでアートプロジェクトとしてギャラリーをお寺にしちゃおうと。日本的なお寺である必要はないんですよ。昔からお寺って当時の技術の粋を集めてつくってるんですよね。それを今、現代なテクノロジーを集めてやるとどういう形になるか。お線香立てたり、お参りをしたり…

近藤:その場合、お客さんは何に対してお参りするんですか?

無中:それは何でもいいんですよ。神様でもなんでもいい。お寺建ててても、お参りするっていう習慣でもないと、アメリカ人はそこに行って何をしていいか分からないから。それを見せてあげれば「お寺ってそういうところなんだな」、ってわかるでしょ。それをギャラリーでやって、周っていったら面白いなと。お坊さん来て、お経が流れてきて…。NYでもお茶会とか、たまにやるんですよ。それはパフォーマンスアートだから。お寺や禅のパフォーマンスアートも僕はあってもいいなと思っていて。

近藤:ギャラリーに、お寺を現代的なテクノロジーを集めてつくるって言うと、たとえばガラスと鉄骨で出来ていてもいいんですよね。

無中:僕は特にガラスと鉄骨が最新の技術だとは思わないので、ガラスと鉄骨で作る必要はないと思う。

近藤:形もいわゆるお寺の形をしている必要もないんですよね?

無中:必要ないと思います。いわゆる一般的な日本にあるお寺がああいう形になっているのは、いろんな意味があってなってるから、それは当然参考にしてもいいと思います。

近藤:例えば、フラー(バックミンスター・フラー/建築家・思想家)みたいなドーム型のお寺があってもいいかな、と思ったんですけど。

無中:折りたたみ式とかね(笑)そういうのがあったりしたら面白いでしょ。

近藤:いつ頃、やろうとしているんですか。

無中:まだ具体的には始めてないんだけど、去年の今頃師匠と僕と話してて、これから企画書を書いてと。誰にアプローチするか全然考えてないんだけど、アメリカで最初にやりたいなと。逆輸入の方が、みんな興味を示すからね。

3

FUTURE SOURCE フューチャー・ソース


>>バリ

無中:今、バリから帰ってきたんですけど、バリは面白いですね。すごいなと感じたのは、完全に自給自足が出来てるってこと、あと、すごく器用で何でも作っちゃう。お寺や家の建築技術がすごい発達してるんですね。レンガとかコンクリートを積んで壁を作って、目分量で測ってるんだけど、ちゃんと家は建っちゃう。
バリで作務衣を作ってもらったんです。ウブドなんかはアーティストも多くて、「とりあえずこんなもの作ってくれ」って言ったら作ってくれて。ウブドのカフェ行くと全ての物が手作り。塩や胡椒を入れるかわいいのがバナナの皮で出てきたりとか。スプーンも自分たちで作っちゃったりとか。

近藤:僕も去年行ってきたんですけど、ほんと、ひとつひとつの物のつくりがいいですよね。お土産にしても、コースターを買ったんですけど、すごく丁寧に編んであって。

無中:そう。竹細工とか籠とか器用で技術が高いですよね。

>>水

無中:あそこは水路が発達しているんですよね。一日に二回くらい、みんな裸になって水を浴びるんですよ。古来から水路が張り巡らされてるから、あそこに住んでた祖先はすごい文化を持ってたんじゃないかな。ローマは、ちゃんと水路が出来てたでしょ。水を粗末にした文明ってたいてい滅びちゃうから。日本でも、どの宗教でもそうなんですけど、水で清めたり。日本は最近、水を大切にしなくなったのと、水を使った生活の習慣がなくなってきたから。バリの人は一日に二、三回くらい、お供えを自分で作って、水を撒いて…日本で言う、打ち水ですね。

近藤:水を大切にしないと文明は滅びる?

無中:科学的に考えても、人間って体の7,8割は水でしょ。健康法にしても何にしても、水がしっかりしてれば、とりあえず人間って生きるんですよ。日本では沖縄が長寿なんですよね。沖縄は炒め物けっこう食べるけれども長寿なのは、水の中にカルシウムとか入ってると言う噂があったり。いずれにせよ、汚れた水を飲み出したら、体も汚れてくるし、地球も汚れてくるというところから考えたら、水は大切。水は浄化してくれますからね。

>>服

無中:着るものは自分で作りたいな、と。お裁縫を自分で趣味にしています。パッチワークとかやって、穴をふさいだりして。そういう中で、着物っていうのは、合理にかなっているなと。日本人の体型にも合ってるし。あと、日本人って着物着てるから、西洋人に比べると歩き方とか姿勢が全然違う。歩幅がまず違うからそれもバリ行って気付いたんですけど。バリの人たちは、頭にものを乗せて歩くから、すごい姿勢がキレイ。日本の下駄とか草履とかを履いて、着物を着ると、やっぱり違う。それが、日本的な美とかに繋がってくるんじゃないかと。

>>お寺の活性化

無中:日本のお坊さんって30万人くらいいるらしいです。自衛隊は20万人。そんな中で、日本のお寺を活用して行けば、とんでもないことが起きるんじゃないか。それは、僕一人じゃなくて、いろんな人がやってるんですけど。今、日本のお寺は葬式するだけになってしまった。バリでは毎日、お寺で躍ったりしている。日本でも昔は、お寺は寺子屋であり、駆け込み寺であり、村や地域の集会所だったんです。それがあったから、お婆ちゃん死んだ時に「住職さんにお葬式頼もうか」、っていうのがあった。葬式がおまけみたいなものだったと思うんですよ。だけど、今は過疎化が進んじゃって、お寺が集会所でなくなったところに、葬式だけ残ってしまったわけであって。お坊さんとの交流もないし、お葬式で高いお金払って、知らないお坊さん呼んでやるんだったら、葬儀屋に頼んでも同じじゃないか、って。地方では先がないって分かってるお寺もあるし、40年くらいしたらお寺は廃業になっちゃうっていうこともあるんです。

近藤:葬儀も、葬儀屋に頼んじゃうことの方が多くなってるんですか?

無中:だって、20代、30代だったら、お寺にも行ったこともないし、仏壇がないでしょ。お寺にも行ったことないし、お坊さん見たことない人いると思いますよ。ということは、結婚式は結婚式場。葬儀は、葬儀屋っていう時代になってくると思うから。お寺は廃業になるしかないんです。それを分かってる人は、お寺も元の形に戻るという意味で、コンサートやったりイベントやったりという、ごく一部のお坊さんもいますけど。気付いている人もいるし、気付いていて何もしない人もいるし。日本のお寺が動けば、いろんな意味で日本は変わってくると思う。もともとお寺とか境内は公共の場所だから、自由に出入りできるところなんですね。寝てても誰も何も言わない。でも、日本でお寺で寝てると警察呼ばれちゃうだろうけど(笑)。

>>地蔵レーベル

無中:今度は「地蔵Rave」を企画しているんです。師匠が踊るのが好きなんで。みんなでCD持ってきて、それをシャッフルして、どの曲がかかるか分からないんだけど、かかってきた曲に合わせて踊る”コズミックダンス“、というダンスのワークショップをやってる。「地蔵Rave」は、まず、「修行篇」というのがあって坐禅して、「煩悩篇」っていうのは、般若心経唱えながら踊りだすっていう(笑)。
近藤:(笑)ファンキーですね。

4

お坊さんのお金事情


近藤:ちなみに今、生活費はどうやって稼いでるんですか?禅センターからはお金もらえるんですか?

無中:(笑)いや、もらえないですよ。逆に家賃払わないといけない。

近藤:アメリカでは、お坊さんではお金が入ってこないんですか?

無中:アメリカでは無理ですね。仏教の葬式をしないから。逆に50年後は、禅が流行って禅結婚や禅葬式が増えていくだろうから、アメリカの方がビジネスチャンスがある(笑)。

近藤:お布施とかはないんですか?

無中:センターには来るけど、個人的にはないです。自立した経済的なサポートシステムを持っていないと、禅センターの経営は出来ないから、みんな困っているところなんです。

近藤:基本は、どういう経済的システムなんですか?

無中:夏のゲストシーズンの宿泊費が収入ですね。もう一つは、「グリーンズ」と言うベジタリアンのレストランがあって、独立した企業ですけど、そこの収益が禅センターに入ってくるようになっているんです。

でも、これから「地蔵カフェ」の活動で「地蔵基金」を作ろうと思っているんですよ。何をするかっていうと、お金を集めることで世界中の禅センターのサポートをしていこうと。そういう野望を今、師匠と思っていて。

近藤:ちなみに、お師匠さんは僧侶として稼いでいるんですか?

無中:いや、殆ど稼いでないはずです。師匠は僧侶としては檀家もってないし、葬式とかもやらないですから。たまに友達から頼まれてやりますけどね。一般的な日本のお坊さん業としての収益としてはほとんどないです。過去10年間、絵を描いたりとかで、家族5人、子供3人と奥さんとお婆ちゃんを支えてこられた方です。

近藤:そうなんですか!お寺からから給料もらっているのかな、って思ってました。普通はそうなんですよね。

無中:そうですね。お葬式のお金で成り立ってますね。でも成り立ってないっていうのもあるんですけどね。公務員とか町の役場とかで働いたりしてる人もいます。

近藤:無中さんは、地蔵カフェの収益で生活してるんですか?

無中:そうです。基本的には遊んで、なんとかなってます。いろんなところへ行って、いろんな人と会って。

近藤:遊説しているみたいですね。

無中:巡業ですね。ドサ周り(笑)。

近藤:今度、東京で、地蔵カフェやりましょう!

松根無中 Keigaku Muchu 39歳。申年/蟹座。サンフランシスコ在住(現在住所不定のホームレス)。カリフォルニアアーツ卒業後、寿司職人などを経てサンフランシスコ禅センター所属。2005年から、師匠の柿沼忍昭とともに世界各地で「地蔵カフェ」「地蔵食堂」を開催。座る、食べる、生きるという日常に自分を見つめる場を提供、気軽な形で禅の精神を広める活動を続けている。趣味は料理、アート、旅、歩く事、ヨガ、瞑想。お気に入りの映画は『アメリ』『千と千尋の神隠し』

インタビュー・写真:近藤ヒデノリ(TS編集長)
場所:池上本門寺境内
日時:2007. 3.4
協力:坂口惣一
リンク:地蔵カフェBlog Zen Cooking Blog

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