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群青いろ (映画監督) 後半


1

フューチャーソース


>>群青いろの次回作、次回作を完成させること


高橋:フューチャーソースを考えたんですが、なかなか出てこないんですよね。

廣末:ほんっとないですよ。興味あるのは僕らの次回作で、それを完成させること以上の未来が(笑)。

高橋:望んで何かをやろうとすることが自分にはしっくり来ない。やってる積み重ねで何かになるのは大歓迎なんですけど。

米田:設定するのは好きじゃない?

高橋:そうですね。今こうしたいって思うものを捕まえるのに精一杯で、それをやったら、きっと何かになっちゃうんじゃないかって。いつも、それしかないんですよ。

米田:次の公開作品『夕日向におちる声』は、どんな作品ですか?

廣末:一番身近な親子という関係が、コミュニケーションが失われた状態から始まるんですが、家族像を3つくらい用意して、その人たちが失われたものを取り戻す作業を描いてますね。

米田:それは廣末さんが監督なんですね。


廣末:はい。それで自主制作ですね。
米田:自主に戻ってどうですか?

高橋:作る気持ちは全く変わらずで、今どのシーンをどういう感じで撮ってるのかを分かってる人が周りにいるので、それが強みってわけじゃないんですけど、いいなって思います。

米田:いつも同じスタッフでやられてる?

高橋:ありがたいことにやるって言うと、みんな来てくれるんで。

米田:今後も自主映画と商業作品と両方やっていくつもりですか?

廣末:商業作品は僕らがやりたいと思うスタイルで言うと多分無理だと思います。撮れるようになったら、いいなとは思うんですけど。

米田:いずれにせよ、やることはぶれないということですね。

高橋:そうですね。僕らが今撮ってるようなスタンスで、ただバジェットだけが増えれるということが許されるのであれば、みんなにギャラも払えれるし、ゲリラ撮影じゃなく、気を遣わずにロケ場所もちゃんと借りてやれるので。

米田:では、今は脚本家として稼いだお金の中から映画制作につぎ込むという感じですか?

高橋:まあ、つぎ込むって言っても数万円なんで(笑)。

米田:それぐらい出来ちゃうんですね!じゃあ廣末さんも同じような感じですか?

廣末:ハイ!僕はもっと悲惨ですけど、頑張ってます(笑)。

米田:僕らTSも無償でやってるんで応援しますよ!(笑)。 でも、暗いとか重いとか言われることに対して反発して、コメディ撮ってやろうとか思ったりしないんですか?

廣末:うーん。僕らがコメディ撮っても、やっぱり暗いって言われるんじゃないでしょうかね(笑)。

2

生きている日数分やりたいことがある


『夕日向におちる声』(2007)(C)PFF
監督・脚本:廣末哲万、脚本:高橋泉、出演:牛腸和裕美、藪本悟司
夏の夕暮れに鳴くヒグラシ。その声に覚えはあるが、姿を見たことはない。引き蘢った息子と、その姿さえ思い出せない母。すれ違い続ける時間の中、互いの鳴き声は届くのか? 群青いろ最新作。


米田:すでに『夕日向におちる声』の次の作品も撮られているとのことですが、多作ですよね。1年に2、3本も撮られてるんですね。

高橋:それくらい撮れればいいですね。『夕日向~』は2ヶ月くらいで長かったんですけど、基本的には10日くらいで撮りますね。

米田:次のアイデアももう考えている?

高橋:そうですね。撮った後にチェックしがてら、酒を飲んでりするんですけど、「こんなのやりたい」ってドンドン出てくる。生きている日数分やりたいことがあるという感じですね。

米田:賞の受賞もあり、自分たちの作品が認められ始めたという点に関してはどうですか? 

高橋:もちろん嬉しいですけど、別に著名人や審査員じゃなくても、一般のお客さんが見ても、何か感じてくれるのは嬉しいですし。ただ、やっぱりこのペースで作っていくと、もう『14歳』も結構、過去の作品になんですよね。

米田:ですよね。こういうインタビューっていつも申し訳ないんですけどね(笑)。

高橋:作品に対して一番集中したり熱くなったりしてるのは、作ってる時ですからね。

米田:評価は嬉しいけど通過点に過ぎず、いつも次を作ることに夢中になっているということですね…謙虚ですよね。

廣末:部分的に謙虚です(笑)。

米田:例えば、野心なんてないんですか?


廣末:ないですねえ……。でも、たまに「戦争止めさせます」って言ってる(爆笑)。
米田:それって逆にすごい野望じゃないですか!?  自分の映画で戦争を止めるということですか?

廣末:あの~9.11の後、ジョン・レノンの『imagine』が戦争やる気をなくすからアメリカで聞いちゃいけないってお触れが出たのって本当なんですか?

米田:反戦歌ということでそうなったと聞きましたね。

廣末:僕は戦場の人が思い出すようなものを作りたいです。極限状態でも思い出すような。銃を撃つの止めたいとか。「もう基地に帰ろう」とか(笑)。

米田:なるほどね。それって実は、金持ちになろうとかいうよりもアンビシャスかもしれないですね。

高橋:自分は考えてることは、正しいっていうエゴはちゃんと持ってますから。

米田:「傑作を絶対作ってやる!」みたいな気持ちは?

高橋:それは毎回作品作るたびにありますね。

米田:好きな映画の話が出ない監督って珍しいですね(笑)。影響を受けた人や作品はないんですか?

廣末:好きなのはありますよ。それこそ市川準監督もそうだし、言い出せば、『ゾンビ』でも、ジャッキー・チェンでも数多くありますけど……

米田:挙げるまでもないというか、挙げたくないというか。

群青いろ:うーん…好きだっていう部類の物には全然挙げられますが、今自分たちがやっていることに影響っていうのはあんまりないんですよ。

米田:でも、それが群青いろのオリジナリティなんでしょうね。

廣末:そこまで圧倒的な人がいるところに一緒にやろうとは思わないですし。踏み込んでいく気はないですね。

米田:意識的か無意識か、誰もやっていないことをやろうという思いがあるんですかね?

廣末:最初、やり始めた頃はあったかもしれないですけど、今はシンプルになっていってる気がしますね。そんなところでやらなくても、自分達がやれることをやっていこうってところが強いです。

3

単なる映画で終わらない映画を撮りたい



米田:最後の質問は、お2人の今後についてなんですけど、どういう映画を撮っていきたいか、お言葉いただきたいと思います。

廣末:内容はその時その時になってみないと分からないですけど、確実に撮っていくのは“人”であって、人の中に残るものというか、観た人自身に返っていく作品が一番理想です。単なる映画ということで終わってしまうのではなく、「自分だったらどうするのか?」とかその人に思わせたり、その人の日常をちょっとでも変化させるようなものを作っていきたいですね。

高橋:僕はとりあえず、自分の中で消化しなきゃいけないものを消化することでいいかな、と思ってます。

米田:消化しなきゃいけないものとは?

高橋:自分の感情だったりとか……。そういうのをみんな溜め込んでいって、どう消化していいか分からない人がいっぱいいると思うんですけど、僕は運良く映画という表現手段を知っていて、映画を作れる場所にいるので、それをどんどん追求していきたいと思っています。

世の中には自分の感情を刃物に変える人だっているし、実際の暴力でなくても、ネットで暴言を吐いたりしている。みんな何かが溜まっていると思うんです。僕は映画でそれを消化したい。欲を言えばそれを誰かに観てもらって、自分と同じように鬱屈した状態の人間もいるんだ、みたいに、その人が暴力なんかに向かわずに、映画だけで消化してくれたら、ありがたいなとは思います。やっぱり、くすぶっている感情を人が持っているということを頭では分かっていても体感していない人が多すぎるという気がします。

米田:くすぶっている感情になぜこだわるんでしょう? 高橋さんにとって、くすぶる感情を表現に変えることでなんとか解消したい、というのが映画を作るモチベーションの1つということですか?

高橋:何かを撮りたいという発信源はそこだと思うんです。でも、表現って、発信源だけでは何もできない。感情を映画製作の方に流すというか、感情の変換装置みたいなのがどこかで必要だと思うんです。

米田:自分の中での表現への衝動は忘れたくはないけれど、日々生活していくうちにだんだんと劣化していく。それを保ちながら突き詰め続けているのはすごいなぁと思うんです。

高橋:ただ、それは過去のどの時点ということではなくて、現在進行形で日々生まれてくるものなんです。それに、決して重たく、暴力的な感情ばかりじゃなくて、単純に優しい感情であっても、それを上手く表現できないから、映像で表現したりする。必ずしも苦しいものだけを吐き出そうとしているわけじゃないんです。

米田:お2人の映画は辛いけれど、どこか優しいまなざしがありますね。でも、映画と向き合っていて、「辛いな」みたいな時期はなかったんですか。辞めたいという時期もない?

廣末:全くないです。

米田:ずっとこのペースでやれたらいいな、と?

廣末:このペースで作った後の展開がもう少し広がってけばなって。コンスタントに劇場にかかるとか。

米田:ちゃんと生活できるとか?

廣末:そうなったら、もっといいですね。頑張ります(笑)。

米田:応援出来ることがあれば言って下さい。告知もしますから(笑)。………ちなみにHPは止まっているんですか?

廣末:あはは!!(爆笑)。

高橋:段々更新するのがメンドクサくなって(笑)。自主製作をやってた頃は、HPを頼りにコンタクトを取ってくれてた人もいたんですけど、今となってはぴあに連絡が行くし、色んなところで告知もされてるんで、HPでDVD発売とか告知とかしなくてもいいかなって(笑)。

米田:過去作品を調べようと思ってHPを見てたんですが、「こんなに撮ってるのか!」って作品数に驚きましたよ。でも、2005年から止まってるなって(笑)。

廣末:高橋さんは脚本書くのに忙しいんだと思いますよ。

米田:廣末さんは??

廣末:僕はネット繋いでないんで。

米田:でも、さっき担当の方から聞いたんですけど、ゲームは大好きらしいじゃないですか?

廣末:そうそう、ゲームで忙しいんです(笑)。

米田:あはは。新作『夕日向におちる声』、期待しています!今日はありがとうございました。

群青いろ Gunjyo Iro
高橋泉(たかはし いずみ・1973年埼玉県生まれ)と廣末哲万(ひろすえ ひろまさ・1978年高知県生まれ)が2001年に結成した映像ユニット。ぴあフィルムフェスティバル(PFFアワード)2004にて、『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』の2作品がグランプリ、準グランプリを独占。その後、『ある朝スウプは』は世界の映画祭でも多数の賞を受賞した。また、初の劇場公開作品となった『14歳』では、香川照之らを迎え、14歳前後の少年少女の不安定な感情を描き、第36回ロッテルダム国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞。『鼻唄泥棒』(05年)でも同賞を受賞しており、2年連続受賞となった。
最新作『夕日向におちるこえ』が第29回ぴあフィルムフェスティバル招待作品部門・自由な日本映画たちで8/4(土)21:00~東京・渋谷ユーロスペースにて上映される。

インタビュー:米田知彦(TS副編集長)
撮影:有高唯之
協力:坂口惣一
取材日:07/06/26

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