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竹内スグル (ディレクター/写真家) 後半


1

山ごもりと表現することの関係


近藤:話は変わりますけど、僕、去年、竹内さんが「冬の間、4ヶ月近く山ごもりしてスノボをしてる」って聞いて、そういうライフスタイルとか、ものをつくる人のやり方としてとか、いろんな意味ですごくびっくりしたんですね。それで、山ごもりする生活スタイルにするってことと、自分の表現とかものを作るってことの関係を聞きたいなと思っていて。

竹内:すごいシンプルで、さっきの「フェードイン」とかが関係してるんですけど、要するに、色んなものに対して自分で答えを出していくっていうな行為が必要だと思ってるんですね。もちろん、色んなことに答えられるわけはないけど、「あれについてどう思うか」「僕はこう思う」って、自分の周辺のこと、表現にまつわることもちろん、自分で、一人で考えること。もちろん、人とディスカッションして話を聞いたりも必要だとは思うんですけど。

東京でこういう仕事やってる人に一番足りないのって、一人で考える時間じゃないかと思ってるんですよ。もちろん、そのために喫茶店行ったりもするでしょうけど、色んなことを考えたり、見たり、聴いたり…そういうことって、圧倒的に1人な状況っていうのが必要だと思ったんですよね、感覚的に。

東京で睡眠とか飯とか金とか、色んなものが全部他者に委ねられてるっていうような生活をしていると、なんか、ものを作る理由っていうのが自分の中になくなっていく気がしたんですね。上手く言えないですけど。日常を送らないと、物事に対する疑問とか怒りとか、そういう感情が、本質的に沸かない気がちょっとしたというか。

近藤:そうなってきますよね。なんか、東京に生きてると効率いいようにしようとしますよね。

竹内:僕の場合は、お昼前に起きて、外でご飯がいきなりぽんと出てきて、仕事の打ち合わせをして、それで例えば、映画とかDVDとか資料を見て、打ち合わせに混じってしゃべって、夜、どこかで出されたご飯を食べて、家帰って寝るっていうことだったんだけど、なんて言うか…仕事は見てるんだけど、自分の周辺のものを何も見てないって思ったんですよね。例えば、生活の中で美しいものを探すには、自分で探すっていう行為が必要なんだけど、そういうことをアルバイトの人たちが集めてきて、それを見に行くみたいな。

近藤:そうですよね。たいていランキングだけ見てたり、すでに編集されたものを見てますよね。

竹内:足元が見えない、人工的な感じがすごいしてましたね。パーンと切り離されて、都合のいいものだけとってたんですね。システマティックな生活って、さっきの話でいうと「台詞を生きてる」んじゃないかって。結局、探すとか、見るっていう行為が表現の根源だと思うんですけど、この力がなくなっていくと思ったんですよね。これは危ないと。

結局、僕が食べてると思ってたものは、「台詞」でしかない。その周辺にあるものは落としてるんですよ。だから、ものを見るとか聴く力をつけるためには、まずは地面に一回降りて、よく周りを見て拾うというか、そこに全てがあるという風に一応仮説を立てたんですよ。いわゆる情報とかもあんまり入れずに、自分でものを考えて生活をするというところから全てが始まると。

近藤:今もウェブ、コンピューターを普段使って無いんですよね…

竹内:そうですね。情報をシャットアウトして…それはミュージックビデオ作って色々やってたときの反省も、ちょっとあったりして。情報を色々見たり聞いたりして「あれいいなぁ、これいいなぁ。」とかやってると、「結局自分はどうなんだ?」ってね。自分が作ったものに自信がなくなってくるんですよ、だんだん。自分のつくったものが何かに似てないと不安になってくるっていうね。

近藤:その感覚、なんとなくわかります。

竹内:自分の作ったものがいいか悪いかわからないものが出来た時って、不安なはずなんですよ。「とりあえず完成させたけど、これでいいのかな」って。でも、不安なものっていうのが、実は「ものを作った」っていう行為だって思うんですよ。「どうかな、これ?」みたいなもの、自分のエネルギーがウワーッっと形になって偶然出来てしまったもの。「いいか悪いかは、実は自分でもわかんない」っていうのが本当に評価に値する、世の中に出すべきものじゃないかって思っていて。

僕はずっとそうでしたね。後々人がいいと思ってくれたものって、ほとんどその時は不安なものばかりでしたよ。「これは上手くいった」と思ったものっていうのは、やっぱ自分自身がわかっちゃってるものだから自分自身でも新鮮じゃないし、それってやっぱ再生なんですよね。なんか。

近藤:そっか、自分がすでに知ってるものの単なる繰り返しなんですね。

竹内:だからあんまり興味がわかなくなって。

2

スノボに行って、リフトの上で考える


竹内:そうそう、スノーボードとか言っても一本滑ると5分リフトでしょ。だから、スノーボード行くのって、北海道の場合はペースが違うけど、ほとんどリフトに乗ってるんですよ

近藤:たしかに、そうですね(笑)。

竹内:で、リフトに乗ってるとあまりにもやることが無いんですよ。本は無いし、テレビは無いし、音楽ないし、景色雪だし…もう、物考えるしかないんですよね。で結構考え事が進むんですよ。

近藤:それは、スノボの技の事だけじゃなくて…

竹内:スノボの技の事ももちろん考えるんですけど、さすがにそれだけじゃもたなくて(笑)

近藤:そうですよねー。朝の7時半から夜までやってたら。

竹内:その間に考えるんですよね。具体的にCMの企画とかじゃなくて、映像のこととか色々と。「こういうのを映像にしたいな」とか、大体そことかで出てくるんですよね。具体的にでなくても、そこで自分の中で思ったこととかがパラパラって形になっていって、いざ仕事受けた時にパァーンとくっついて、みたいな感じですね。だからリフトがなかったら、滑りっぱなしだと意外と辛いかもしれないですね。

近藤:ちなみに、スノボで板に乗る自分の感覚を研ぎすませる感じと、カメラを自分の思い通りの感覚でピッとあわせられる感じとかって、どこか関係しているんですか。

竹内:別にそれを目的になんていうのは思ったこともないけど、結果的には影響あるかもしれませんね。仕事続けるために一番気をつけてるのは実はコンディションなんですよ。だから、コンディションを整えるために、例えば99年に一回酒をやめたりとか、2003年からヨガをやったりとか。なんだかんだって言って、映すのはカメラなんで、自分はそれをなるべくいいコンディションでコントロールできれば、という感じですよね。

3

30代の頃について


近藤:竹内さんの30代の時とか、その非常に忙しいPVをつくりながら色々吸収しまくった時代があったから、今、そういう風に思うんでしょうか。それとも、例えば15歳くらいの人がいきなり山に篭って何かをつくる、っていうのもアリなんですかね。

竹内:アリだと思いますね。僕は気づくのが遅かったというか。まぁ、仕事柄もあったし、自分の性格もあったと思うんですけど、ミーハーだったんですよね、もろMTV世代。MTVを研究してたんですよ。本当に。NYにいる知り合いに頼んで、120分何本とか、お金払ってVHSで毎月送ってもらってたんですよ。それを朝から毎日4時間くらいずーっと見て、コマ送りして研究してましたね。一緒に仕事をしている人とかと「この光はどういう風にやってるの?」みたいな。毎回そういうのを研究して「次やってみよう」って。もうドリルですよ、ドリル。

近藤:それはそれで、役に立ってるんですよね。

竹内:もちろん、すごい役に立ってるんですよ。「何をやったらどうなるか」、っていうことを何年もやったんで。本当はそんなのはお金もらいながらやることじゃないんだけど、たまたまそうなっちゃった。でも、それは役に立ってるとしたら、「失敗しない」ってことぐらいかもしれないですね。何かあった時に判断を誤らないぐらい。

近藤:例えば、15歳からいきなり何も見ずに、MTVの色んなもの見ずに山に篭って、まあ、山に籠るじゃなくても、都会で引きこもるでもいいかもしれないけど、それで自分の中から発見して「よっしゃー!」とか出したやつが、もう一年前にベストセラーになってたやつかもしれないじゃないですか。

竹内:あー、たまたまね。

近藤:「よっしゃー、これはイケる!」って5案くらい考えたものが、籠ってた5年間の中で全部やられてたかもしれないっていう可能性はありますよね。

竹内:それはショック受けますよ。僕もありますよ。でも、それにぶつかったら「不運だった」と思うしかないですね。でも、本当に、影響を受けずに行けば、オリジナルのものが出てくると思いますけどね。だから、せめて、影響受けるんだったら別のジャンルのものがいいですね。映像から吸収しちゃうと、やっぱ「再生」ですね。

4

インタビューについて「NO PHOTO(MUSIC), NO LIFE」


近藤:竹内さんは富士フィルムとタワーレコードの「NO PHOTO(MUSIC), NO LIFE」のCMで監督とカメラをやってますよね。矢野顕子とか、坂本龍一とか、UAとか、中村達也が写真と音楽について語るあのシリーズは、どういう風に話を引き出しているんですか。

竹内:どっちかっていうと(彼らが)聞いてほしいことが、きっとあると思ったんですよ。例えば、「好きな食べ物は?」なんてミュージシャンに聞いても全然面白くないんですよ。聞きたくもないし。それより例えば、「でっかい音と小っちゃい音、どっちが好きか?」みたいなこと、その人が考えなきゃいけないような質問を関連化して、それを編集してつないでいったり。

近藤:写真について語ってもらった時は、どんな質問を?

竹内:写真の時は、あえて写真の質問を色々しましたね。「写真に撮って残すということは、形として残すということにどういう意味があると思うか」とか、そういう質問をいくつか考えて答えてもらっていましたね。

以前に雑誌で読んだ佐々木正人(アフォーダンス理論)って人のインタビューが、すごく面白いんですよ。例えば、カールルイスに「100メートルを速く走るには、どうしたらいいんですか?」っていう質問をしても、たぶん答えたくないと思うんですよ。それより、「9秒98と、9秒99の間には何があるんですか?」って細かいことを質問したり、シンクロの選手に、「下にもぐって上に足を突き出す感覚っていうのは、障子を突き破るような感覚なんですか?」って、ニュアンスの話を聞いたりしてるから、すごい面白いんですよ。

ああいうのって、僕らがこだわっているところを聞かれると、ものすごい話長くなるんですよ。さっきのカメラと音楽の話みたいな。

近藤:あー、それはよかったです。今日はちゃんと聞けたのかなぁと思ってたので。

竹内:全然、バッチリじゃないですか。そういうのを気にして見ていて全然駄目だったのが…某タレントが色んなこと体験して質問する番組。まず、本人自体が興味ないんですよ。だから隙間を埋めるみたいな質問してて…あれはひどかったですね。

近藤:そういうのは、見ててわかりますよね。僕も『情熱大陸』とか『プロフェッショナルの流儀』などのドキュメント番組はよく見ててすごいなぁと思いますけど、それ以外ではやっぱり時々「なに聞いてんだよ、アホ!」って突っ込みたくなるのがありますね。

竹内:茂木健一郎さんのは、脳科学者だからそっち方面から切り込んでいくじゃないですか。そうすると出演者もそっち側の回路にもっていかなきゃいけない、そこがちょっと面白いんですよね。

近藤:面白いですね。逆に、スポーツ中継とかでインタビューしてるの見ると、だいたいひどい。「なに聞いてんだよ。つまんないこと聞くなよ?っ!!」って思いますね。

竹内:思いますね。

5

インタビューについて『比類なき者』


竹内:昔、僕、『比類なき者』っていう番組(TV東京/本「告白録」としても発売中)やってたじゃないですか。

近藤:あれ、すごいですよね。

竹内:僕らが毎回、質問される人と質問者を選んでたわけですけど、すごい質問がいっぱいありましたね。答える側は本当に詰まってました。

近藤:もし、そういうシステムじゃなかったら答える方も詰まらず、適当に冗談で流しちゃいそうだけど、特定の有名人から質問をされてると、「その人を裏切る」ことになりますもんね。

竹内:そうですね。難しい質問とかあって面白かったなぁー。UAが夏木マリに質問してたんですけど、面白かったですよね。

近藤:夏木マリが、ほんと真剣に考えてましたよね。

竹内:印象的でしたね。みんなすっごい質問考えるなと思って。どんなのがあったかなぁ…。たしか、UAは「初めて美しさを意識したのはいつですか」みたいな質問をしてましたね。宮藤勘九郎(映画監督)が「革ジャンはいくらくらいの着てますか」って聞いて…「この3万円のやつで十分です」みたいな。宮藤勘九郎は、割といいところ狙ってるんですよね。他にも色々質問してましたけどね。あと、ギャスパー・ノエ(映画監督)が塚本信也(映画監督)にしてた質問が、ものすごく難しい質問だったような気がしますね。

竹内:どんな質問だったんですか?両方とも映画作家だし、相当深いところへ?そういう意味じゃ、質問ってけっこう攻撃ですよね。

竹内:攻撃ですよ。たしか、「映画的ということは、どういうことだと思いますか?」というのが最初の質問だったかな。もう塚本さん相当テンパってましたね。他にも「父性的映画、そういうものは存在すると思いますか。」とか。

近藤:ギャスパー・ノエってインテリなんですね。

竹内:インテリでパンク。『アレックス』とかはめちゃくちゃ好きでしたけどね。

近藤:あ、見てなかったので、今度見てみます。

6

閑話休題?「生々しい映画話」


途中、映画とか音楽の話で止まらなくなったりしてたのですが、さすがに全部は載せられないので、暴力とか、とにかく生々しいエネルギーが渦巻く映画話で盛り上がったのをちょっと紹介。

竹内:『アレックス』は、音楽をダフトパンクがやってるんですけど、とてもダフトパンクとは思えないような、すっごいうねってる音楽なんですね。曲のタイトルが、「直腸が?」とかそんなすごい名前で。モニカ・ベルッチが15分くらい出てて、自分の恋人をレイプされた男が相手に復讐するという、ただそれだけの一晩の話なんですけど。

近藤:レイプされて、死ぬんですか。

竹内:レイプされては死なないです。最終的には死んじゃったのかな。相手に復讐するシーンがあるんですけど、そこが、すごいんですよ。

近藤:なんか、『オールドボーイ』を思い出しますね。

竹内:あれも怖いっすね。でも、もっと生生しいんですよ。ワンカット長まわし、たぶん、フィルムの限界まで回してますね。各カット全部その長さで。映画作家として、テクニックもあるんですよ。メイキングで見たら、毎回こんな生々しいものを撮ってるけど、ポスプロ(ポストプロダクション/撮影後の後作業のこと)がすごいんですよね。驚いちゃいけないとこなんだけど「これ合成ですか?!え、これCGですか?!」みたいな。

近藤:そういうの全然使ってなさそうですよね。生々しいっていう言葉がどんときますね。あと、映画で暴力と言えば、あとキューブリックがいますね。

竹内:『フルメタルジャケット』はヤバイですね。あのゾクゾクさが、18禁だなーって(笑)。

近藤:僕も若い頃に見て、ものすごい興奮しちゃいましたね。ほんとヤバいっすね、あれは。

竹内:あとは『地獄の黙示録』とかじゃないですかね。改めてみると、立花隆があれで解説本2冊書いたってのもわかる気がしますね。『地獄の黙示録』すごいですよー。奥さんがメイキングをとってたんすね。あの映画もう、ほんとにトラブル続きで…

近藤:らしいですよね。

竹内:しかもスケジュールがなくて、どうしても完成させなきゃいけないシーンが完成されなくて毎日ノイローゼみたくなってて…

近藤:ベトナムの狂気と、映画製作上の狂気が重なったような。

竹内:最後のシーンも、たまたま部族の祭りをやってるのをコッポラが見て「これはなんだー!?これを撮ろう」って、もう一回撮影のためにその儀式をっていう…。あれ、撮ったフィルムの90%捨ててるんですよ。90%がボツ。素材自体は400時間。

近藤:200分の1ってことですね…。

竹内:その篩(ふるい)にかけられただけのことがあって、良く見るとワンショット、ワンショットがすごいんですよ。「うわー!光がすごい計算されているショットだな」っていうのがずーっと続く。超えられないと思いますね。ああいう全体のパワーは。渦巻くエネルギーみたいなのを感じますね

近藤:『タクシードライバー』も、そういうエネルギーを感じるんですよね。

竹内」そうですね。あれは脚本がとにかくすごい。ポール・シュレイダーが、あっという間に書いちゃったんですよね。ほとんどアル中で人間としてほとんどダメになりかけてた時にに仕事が来て、2週間で一気に書いたとか。ジョディー・フォスターがもっとも良かったときですよね。最高でしたよね。トラビス。

近藤:デートで普通に花束もったりしてたのに、何を思ったかいきなりポルノ映画つれて行ったり。

竹内:そうそう、いきなり壊れるんですよね。いやぁ危ない感じでしたよね。シンプルな話ですけどね。

7

閑話休題?オクラ仕事


竹内:昔やった日立のシリーズでCoccoが出るやつとか、面白くて、僕は好きだったんですけどね。漫画のブラックジャックが出てくるんですよ、で、声がCoccoなんですよ。途中でブラックジャックがCoccoに切り替わる。

近藤:あれ、ほんと不思議ですよね。

竹内:まず、「ブラックジャックの声が女」っていうのがすごい不思議で。切々と言ってるんだけど、途中にアテレコしてるCoccoの顔が白バックでバン!って出て、台詞そのまま言ってて…。出来上がったときにいいのか悪いのか誰もわかんなかったんですよ。だれも。

近藤:「なんだこれ?」みたいな。ちょっと衝撃ですよね。

竹内:しかも、心臓の鼓動をサンプリングして、それがずーっと60秒間。苦情がきて、終わりました。

近藤:僕が昔、佐内さんとSONYでつくった映像も鼓動系だったんですよ。ドクドクドクドクドクドクドク!!!!って。

竹内:速いんだ!

近藤:「速すぎて怖い」って、NGだったんですよ。すごいやばいんですよ。途中でSONYが、ブランドカラーが赤だからって、赤い水玉みたいなのを入れたら逆に余計にすっごい怖くなっちゃって。「これはちょっと…方向違いますよ」って(笑)。

竹内:やってますねー

近藤:面白かったですけどね、ずっと篭って編集室でずーっとやって。

8

FUTURE SOURCE/最近興味のあること


>>幼児期の記憶

竹内:生い立ちって、やっぱりその人にとって大きいと思うんですよね。たとえば、仕事仲間とか友達で、「こいつ、いじめられたことないんじゃないか」っていう奴がいたりするんですよ。弱者の気持ちが全くわかんない。人を傷つけることが平気っていう。でも、昔ちょっと痛い目に遇ったら、そんなことしないじゃないですか。

近藤:優しくなるっていうか。

竹内:そうそう。それで、僕は最近「自分がなんでこういう方向にいくのか」っていうのを、過去にあったことの引き出しから思い出したりしてて、ひとつ発見できたのが…

目の前で一回、人が死んだんですよ。その死んでる過程を目撃してしまった。
子供用の丸いプールに排水溝があって、そこの網の蓋がはずれてたんですよね。結構、人はいたんですけど。僕の視界に入るところに、ある子が潜ってるんですよ。顔はこっちに上向いてたんで、「普通に潜ってんだな」って感じだったんだけど、しばらくして「なんか、長いこと潜ってるなぁ」って…。大人が気づいて「大丈夫か?!」って触ろうとしたら、排水溝に片足が吸い込まれてて抜けないんですよね。そっからもう、プールは大パニック。おばさんとか、その辺の人たちが絶叫しながら「モーター止めて?!」みたいな。20分くらいかかったかな。やっとモーターが止まって子供をひっぱりあげたら、足の付け根から先が全部、黒とエンジの中間みたいな色なんですよ。それを目の前で見て…もうトラウマですよ。

近藤:その少年は、もう上向いてた時点で死んでたんですか?

竹内:その時はまだ生きてたらしいんです。その日の夜に、町内放送みたいなので「今朝、プールで少年が死んでしまいました。」って聞こえてきて…。

やっぱ自分の視界の中にいたっていうのと、自分が何もできなかったっていうのもあって…暗い影を。子供なりに自分を守ろうとして、気がつかないうちに封印してたみたいだけど、よくよく考えると、あれがその後も色んな事に影響しているような。

近藤:それが、死とか、なにか、すごく激しいものに惹かれるのに関係しているんですかね。

竹内:隣の家のものすごい仲良かった子も、すぐ近くの池である日水死したんですよ。そういうのが続いて、なんか死生観みたいなものが…まだ10歳もいかないくらいのうちに出来てしまったというか。まぁ、他の人も色々惹かれるものがあると思うんですけど、どういうものを見てきたかっていうのが関係してる気がしますね。

>>玄侑宗久

竹内:禅に興味があるんですよね。そんなに深くじゃないけど。禅の思想とか…梶井照陰さんの波の写真とかもそうなんですけど。なんていうか…

近藤:僕も、アメリカ行ってからなんですけど、最近も夏から禅の本を何冊か読んでるんですよね。禅のどの辺に惹かれます?

竹内:禅という考え方そのものというか…いろんなものを捨てて行って何を残していくかみたいな。ま、何も残さない、みたいな感じなんだけど…。

近藤:中国思想で「不立文字」ってのを読んだことあるんですね。文字っていうもの自体を信用していないから、文字に書き残さないとか。禅も、ちゃんとした文章で「禅とは?」って書いたものはなくて、代わりに全部、禅問答みたいな物語の形で残しているんですよね。

竹内:確かに。

近藤:それで煙に巻くみたいな感じで…例えば「真理とは何なんだ、そう聞くお前が真理を知ってるはずだ」って言うような、言葉で言おうとすると嘘になっちゃうから、「自分の直感で知れ」と。

竹内:僕のいとこが昔、わりと仏教に近い本を出したんですよね。彼がまだ20代の頃で、「外からきたものは外に出て行く…それは非常にさびしいものだ…内側っていうのがすごい大事で、内側を高めていく」っていうようなことがあって、中学生くらいでそれを見て、なんか面白いなと思ったんですね。要するに全部、内側にあって、そこをとにかく見続けるというか…

近藤:禅の人も、内側に籠るというか,人里離れて隠遁生活したりするイメージがありますよね。茶道も、街中にいても三畳の部屋作ったりして。

竹内:あ、わざと隔絶してね。

>>ミニマル

とにかく、どこまでミニマルに見ていくかに興味があるっていうか。どんどんミニマルになっていくと、感覚的には宇宙とかに繋がって…。牧鉄馬(演出家)が面白いこと言ってたんだけど、梶井照陰の写真とか見て、「テクノですよね」って言うわけ。

近藤:あぁーっ。

竹内:なんとなく感覚的にわかる気がして。ミニマルにいくとコスモスにつながるって言うか…

近藤:イームズの『Powers of 10』も、宇宙から拡大、拡大、拡大で人の中に入って、最後はまた宇宙に行きますもんね。

竹内:竹内:あー、そうそう。繋がってくんです。

近藤:ミクロコスモスとマイクロコスモスとか言いますよね。

竹内:結局、小さくしてくと宇宙と繋がるみたいな感じがあって…牧さん曰く、「たしかに鼓動というか波動というか、梶井さんはそういう波の写真を撮って、テクノだし、禅だなぁ」って。なんか、「ここに全てがある」みたいな気がするんですよね。

>>我唯足知

竹内:全然関係ないけど中国の言葉で、「足るを知る」っていうのが結構好きで…。「足るを知る」って、要するに自分の生活や周辺をちゃんと見ると、実はそこに全てが揃っているんじゃないか、ってことで、いちいち外に行って、「あそこはいい、ここはいい」みたいなことをする必要はないって。

もの作る時の感覚として、「何にも無い空間にポンと立つ」っていう感覚で作るのが一番好きなんですよ。モノにうわーって囲まれて作るっていうのも、母親の胎内みたいな感覚で、それはそれでやりやすいんですけど、何もない空間にポンと立ってものを考えるのが好きで…。そのために、モノも、時間も捨てなきゃいけないし、色々捨てきって、ポン!と立って、そこで浮かぶものを一番大事にする。そのセッティングをするのがえらい難しいんですよね。東京にいると。

近藤:あんまり、ものを見過ぎない、っていうか。でも興味あるやつは見て、みたいなね。

竹内:興味あるやつは、まぁ生活として見たりするけど、本当はそういうのも避けてもいいみたいな時期が来るかもわからないですけど。

近藤:テレビのニュースにはまってるっていうのは?

竹内:それはもう、趣味ですね、そこから何かをつくるとかは全然なくて。例えばニュースで見た事件が題材になったとしても、作りたいものは内側にあって、「一応、入り口として使わせてもらいますね」みたいな感じですかね。

9

なぜつくるのか?


近藤:竹内さんはCMにせよ、PVにせよ、映画にせよ、ずっと映像をつくってて、生活のほぼすべての時間を作ることを前提に考えてるところがあるじゃないですか。なぜ、そこまでして何かをつくろうとしているんだと思いますか?

竹内:それは難しい問題ですよね。小学校の時からとにかく絵を描くのが好きで「消防車の絵が描きたい」って…その時の気持ちの延長で、理由はあんまりないですね。好きでやってるっていう感じですね。作れればいい、描ければいい、撮れればいいっていう。

近藤:以前に話してた医者の友達みたいに「とにかく、女がいればいい」みたいな(笑)。

竹内:やれればいい、みたいな(笑)

近藤:(それと同じで)作れればいい。

竹内:だから僕、手離れ早いんですよ。作り終わったらもう、スパーッと未練は無いです。仕事とかも最後まで揉めて粘って色々死守するんですけど、それ終わると「もうどうなってもいいですよ」みたいな。その感覚がすごい好きで…。一旦まっさらにして、また、ものを作る…人間は好きですよね、物作るの。

近藤:そうですね。なんか、暇になると何かつくり始めちゃう…。

竹内:単に暇潰しじゃなくて、なんか作りますよね。何なんですかね。他の動物は、それほどもの作るっていう感じはしないですよね。

近藤:「残したい」、みたいな気持ちはあります?自分の生きた証っていうか…

竹内:それは大人になってからですよね。それこそ、「子供を作りたい」っていうのはもっと本能的なものだと思うけど…。結果として、ものを作って残した昔の人たちのものを今も見てるので、「こうあればいいな」とは思うんだけどそれが目的ではなくて、「せっかくだから残したいな」っていうくらい。どうせ残すなら、やっぱ自分の子供ですよね。だから、作品を後世に残したいっていうのは、つくる目的とはちょっとまた別のところにあると思うんですよ。

10

ものを作るって、不確定なものというか、でたらめなもの


近藤:何人かに聞いているんですけど、作るときに何か伝えたいものってのがあるのか、あるいはそういうのは無いのか。あるとしたらどんなものなのか。

竹内:僕は全然ないですね。何かを伝えようとしているかっていうよりも、さっきの近藤さんの「なぜ作りたいか」っていう質問を世間に投げかけるっていう感じで、「これは何だろう?…科学実験をしたらこんなものが出来たんで、とりあえず置いてみます」みたいな感じですね。それで、みんなが触りに来たりするのが好き。だから、「こういうものを」っていう形のイメージはもちろんあるけど、「こういうメッセージを残したい」っていう風なのはないですね。僕、自分の考えてることって信用してないんですよ。それは言語的に考えてることなので。自分が正しいとか正しくないって勝手に決めてることっていうのは、基本的にまったく信用してなくて。ただ、起きることっていうのは信用してるんですよね。だから、なにかを起こす装置でありたいと思うんですよね。本当はそこに個人の名前がクレジットされること自体どうなのかな?って思ったりしてるんだけど

近藤:作品は、別に、日々の実験の結果でしかないみたいな。

竹内:「ある人が生きてゆく中で、こういうことした結果、こういうことが起きた。それを一旦、ここに出すからみんなで自由に共有しようよ」って言う感じ。それが、ものを作るっていうこと、ものを作った結果起きることであってほしいって思うんですよ。

自分がこうだとか、ああだとかいうメッセージっていうのは所詮、人間ひとりが考えてることだから、たかが知れてるんじゃないかと思うんですよね。もっとなんていうか、言語的じゃないようなもので、とりあえず欲望のまんまとか…そういうふうに出来上がったもののほうが、なんだかよくわかんないから、人がそれに対して自分なりの解釈をしていく中で、結果として価値が生まれてくるっていうかね。価値が生まれなくてもいんだと思うんだけど。

近藤:映画でもオリバー・ストーン(映画監督『プラトーン』『JFK』)とか、ゴアの『不都合な真実』とか、マイケル・ムーア(映画監督『華氏9.11』)の映画なんかは、どちらかと言うとメッセージが先にあって、そのためにつくってる感じですけど、それとは全然違う感じですね。

竹内:あれはあれで報道で、社会に対して怒りをメッセージとしてぶつけているっていう表現のあり方のひとつだと思うんですけど、ものを作るってもっと、不確定なものというか、でたらめなものというか…たとえば岡本太郎がつくってるものとか、好きですけどね。

近藤:あー、でたらめねー

竹内:なんかもう、出来ちゃったもの…ひねりだして。でもやっぱり、太陽の塔とかを、今でも見たいと思うわけですよ。あれがなくなると、日本の高度経済成長が否定されたような気持ちがして…あれだけは残してほしいなって思ったりするんですよ。大阪の千里ニュータウンって、だいたいの家から太陽の塔が見えるらしいですよ。だから、あそこの人たちはなんかエネルギーを貰ってるんじゃないかって書いてる人がいて…(笑)。

近藤:とにかく異様に巨大ですもんね。

竹内:巨大ですよ。あれ、磯崎新(建築家)とすごいもめたんですよね。元々、磯崎新がお祭り広場っていうメインエントランスの設計を頼まれてて、そこに岡本太郎がシンボルを作るっていう感じだったんだけど、いきなり「太陽の塔を作りたい。高さがこれくらいなんだ!」って。それで、磯崎新が「俺の建築に穴を開けるっちゃ、どういうことだーっ!」みたいな感じ。

あれって、最終的にあの大きさにするまでにサンプルみたいなのが10個以上あるんですよね。最初は小さかったのが、ちょっとずつでかくなって、5メーターくらいになって…最後あの大きさになってるんですよね。あれはやっぱ、すごい。

岡本太郎は、「作りたいっていう気持ちじゃだめ。こういうものを作りたい、っていうのが大事なんだ」みたいなこと書いてありましたね。それは、僕らもよく言うんですよ。「ギターを弾きたい」じゃだめで、「メロディーを想像しろ」って。映像も写真もそうなんですけど、「撮りたい」じゃだめで、「こういう感じのものを撮りたい」ってのがないと撮っちゃだめなんですよね。

長い長いインタビュー、ありがとうございました!
(ここまで読んでくれた読者の方、おつかれさまでした。)

    *
  
その後、たばこをめぐる状況に関連して2006年に開催した僕自身の個展「FREE CAMEL」で竹内さんにらくだと僕自身のポートレートの撮影をお願いした。

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interview by:

近藤ヒデノリ Hidenori Kondo
クリエイティブディレクター、CMプランナー
TOKYO SOURCE編集長、季刊誌「広告」編集委員

1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京写真専門学校中退。博報堂に入社後、休職してNY大学/ICP修士課程で写真と現代アートを学び、9.11直前に帰国。同社に復職後は、TVCMやウェブなどの広告を制作しながら、個人としても個展・グループ展、展覧会キュレーション、書籍の編集など手法を選ばず表現活動を続けている。ラクダ似な旅好き。(photo: Suguru Takeuchi)
ブログ「TRAVEL HETEROPIA」http://d.hatena.ne.jp/camelkondo/

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竹内スグル Suguru Takeuchi 神戸生まれ。レコード会社を経てフリー。UA、JUDY AND MARY、ACO、hitomiなどのミュージックビデオの他、サントリ?、ユニクロ、資生堂、メルセデスベンツ、富士フィルムなど話題のCMのディレクション&DPとして知られる。また、02年には永瀬正敏主演のドラマ『濱マイク』第10弾「1分間700円」を監督する他、世界最短のインタビュー番組「比類なき者」(書籍『告白録』)を製作、05年には浅野忠信主演の映画「乱歩地獄『火星の運河』」を監督した。

インタビュー・写真:近藤ヒデノリ(TS編集長)
場所:竹内氏別荘(長野県茅野市)
日時:2007. 2.9
協力:前田マリコ

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