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トクマルシューゴ (ミュージシャン) 後半


アルバムでは繊細で内省的な印象が強いものの、「トクマルシューゴ&ザ・マジックバンド」によるフルバンド形式のライヴはグルーヴィーでダイナミックだ。ドラム、ウッドベース、ギターに加え、アコーディオン、リコーダー、トイ・ピアノ、ステージに座った姿勢でパーカッション?を叩くメンバーがいたりと、その一風変わったメンバー構成からして、他の追随を許さないパファーマンスとなっている。アルバムの世界観を再現したアレンジの完成度の高さは言うまでもなく、テクニカルなフィンガリングによるトクマル君のギターも非常に美しい。
そして、しどろもどろのまま1人でボケて1人でつっこみを入れて延々と続くトクマル君のMCは爆笑で、もはやライブの名物になっている。今後より一層激しいチケット争奪戦になっていくと思うので(もうすでにそうですが)、観たいと思っている方はお早めにどうぞ!!(米田)

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海外ツアーについて


photo by Ayumi Yamazaki


米田:ヨーロッパにもツアーに出かけてますね。どんな感じで行っているんですか?

トクマル:レーベルが向こうのプロモーターに頼んで。国によってそれぞれ反応は違いますね。スペインでは、何にでも手叩いて「ブラボー!」みたいなことがあって、「聴いてないだろ、お前ら」みたいなことも(笑)。

米田:とりあえず酒入っちゃうからね(笑)。

トクマル:外国だと、お酒飲みに来ているところで音楽やっているから、ちっちゃい音量の人は演奏できないんですよね。そういう場所で演奏する必要があったからこそ、(大音量の)ロックは外国が凄いのかも、とか思ったり。

米田:それにトクマル君のソロは音量小さそうだよね。

トクマル:無理やり音量上げてやったりしましたね(笑)。

米田:その中でもどの都市が好きだった?

トクマル:本当に全部好きだったけど、デンマークは国自体が暗くて(笑)。街がずっと曇りで暗くて。不思議ですね。

米田:スウェーデンや東京は、お客さんの耳が洗練されてるけど、音楽を全く知らないような国に行って演奏してみたいって気持ちはある?

トクマル:ありますけど…、怖くて聴かせられないかも(笑)。

米田:過去のインタビューでは「アフリカに行ってみたい、現地の人が自分の音楽にどう反応するか見てみたい」ってコメントもありましたが。

トクマル:そういうふうに心の中では思っているんですけど、勇気が出ない(笑) 。やりたいって気持ちは凄いあるんですけどねえ。

2

PV、サントラ制作


『EXIT』(PCD-18518 / 2007)
01. Parachute
02. Green Rain
03. Clocca
04. Future Umbrella
05. Button
06. Sanganichi
07. D.P.O.
08. Hidamari
09. La La Radio
10. Wedding
【P-Vine Records(JP) / Almost Gold Recordings(US)】

米田:ところで、音楽以外だと、例えば小説や詩なんかどうですか?

トクマル:書くのは好きなんですけど、読むのが……。文字が嫌いなんですよ。

米田:映画は? キューブリックの話もインタビュー前に話してたけど。

トクマル:映画は大好きですね。デビッド・リンチに一時期、凄いハマってて。全部集めて何回も何回も観ましたね。

米田:『マルホランド・ドライブ』※とか?

※『マルホランド・ドライブ』…2001年。現実、回想、空想、夢、主人公と関係ない第三者のシーンなどが説明のないまま散りばめられている。

トクマル:あれもかなり好きですね。あのわけの分からない感じが。

米田:PVはトクマル君の曲にぴったりな世界観ですよね。監督は自分で選んでいる?

トクマル:基本的には友達にやってもらってます。知らない人に頼むのはちょっと怖いんで。気が合いそうな人、自分の音楽を好きだろうなっていう人に頼んでますね。作りはお任せです。

米田:僕は最初に聴いた時から、トクマル君には映画音楽をやってほしいなと思ってたんですよね。

トクマル:機会があったらぜひやりたいですけどね。

米田:そういえば、『グミ・チョコレート・パイン』※では何やったの?

※『グミ・チョコレート・パイン』…2007年。原作:大槻ケンヂ、監督:ケラリーノ・サンドヴィッチ。トクマルは「演奏指導」名義でクレジット表記。
ちなみに、2008年秋公開の『コドモのコドモ』(監督:萩生田宏治、主演:麻生久美子)
で、トクマルは映画音楽を担当している。

トクマル:あれはサントラじゃなくて、劇中のノイズバンドの演奏。あと巧いギタリストっていう役で。

米田:え? 出たの?

トクマル:出ました。たぶん分からないと思いますけど…。

米田:CMはどうですか? JALのタイアップもやっていたみたいだけど、まだそんなにやってないですよね?

トクマル:海外ばっかですね。あ、※ポカリスエットのCMで使われてますね。

※大塚製薬ポカリスエットCM「魔法の手」編で、向井秀徳がナレーション、トクマルシューゴが音楽を担当。

米田:アニエス・ベーでも使ってもらったらしいけど?

トクマル:アニエス・ベーはお店で聴けるようにしてくれて。(2nd『L.S.T.』は各国のアニエス・ベー店舗にて試聴機展開された。)

米田:ジャケットアートワークはどんな感じで作ってるの? 例えばGELLERSのアルバムは?

トクマル:GELLERSのシャンソン・シゲルがやってます。ソロのイラストも彼にやってもらいました。

米田:ジャケも割とおまかせ?

トクマル:いや、『EXIT』のジャケットはかなり指定しましたね。ドアがあって子供がいて、そのドアは開かないドアにしてくれって伝えて。

米田:初回限定は絵本仕立てになっていて、凄く凝った作りでしたね。

トクマル:ちょっと無理言って作ってもらったんですよ。

3

UFO? お笑い?…フューチャーソース


UFO

明らかに嘘だろ!?っていうのが好き。

笑い

アンタッチャブルが好きです。



米田:楽器以外のものも鳴らしてきたトクマル君だけど、これから新たにやってみたい楽器は? 雅楽に興味があるらしいけど、篳篥(ひちりき)とか?

トクマル:たまにやりますけど、あれはみんなでやりたい楽器なんですよね。

米田:ああ~1人だと寂しくなるんだ。篳篥は独学?

トクマル:独学ですね。人に教わるほど気力はないです(笑)。

米田:ノコギリなんかも演奏してますよね。あれは音程ってどうやるの?

トクマル:あれは誰でもできるんですよ。音程はだいたいカンですね。

photo by Ayumi Yamazaki


米田:テルミンみたいな感じ?

トクマル:そうですね。

米田:テルミンも?

トクマル:やってますね。

米田:スクラッチは?

トクマル:一応道具は持ってはますけど、難しいんですよね。

米田:弦楽器と笛系の楽器が多いですよね。

トクマル:そうですね。目立つ楽器はそういうのが多いのかも。

米田:楽器に関しても、いじっていくうちにニュルニュルと好奇心が出てくる感じなのかな。

トクマル:そういう感触を自分で作っていく、だんだん出していく感じです。

米田:ひらめきは待たないんだもんね(笑)。

トクマル:うん、ひらめけばそれにこしたことはないんですけどね。

米田:音楽以外で興味あることって何かある?

トクマル:色々好きになってみようとしてはいるけど…基本的にはない方向かな(笑)。でも、UFOには興味がありますよ。

米田:僕も一時YOUTUBEでUFO映像とかたくさん観たよ。じゃあ"UMA"(ウーマ・未確認動物)とかは?

トクマル:あ。好きですよ。「明らかに嘘だろ!?」っていうのは凄い好き。

米田:巨大な魚とか生き物とかがたまに世界のどっかの岸に漂着するでしょ。

トクマル:昔、恐竜がひっかかりましたよね。あれどうなったんだろ。

米田:あれは大きなサメが確か日本の南洋漁船の網に引っかかったんだよね…って音楽と全然関係ない話だな(笑)。

トクマル:あとはお笑いかな。

米田:好きな芸人とかは?

トクマル:アンタッチャブル。

米田:(笑)。ちなみにスポーツとかやるの? 身体鍛えたりは…

トクマル:しないですね。

米田:しなさそうだな(笑)。でも、なにげに運動神経はよさそうだよね。

トクマル:意外と(笑)。

4

自分で自分をプロデュースすると初めから割り切っていた


photo by Tadayuki Aritaka


米田:ところで、今は一応事務所に所属しているの?

トクマル:入ってないです。

米田:制約があるところに属するんじゃなくて、自分の自由を確保したいって感じですか?

トクマル:今のところはそうですね。

米田:音楽だけじゃなくてスタンスも独立独歩だよね。基本的に海外とのやりとりっていうのはレーベルの人が受け持っているんですか?

トクマル:僕とレーベルと両方でやってますね。

米田:でも、ストレートに、日本での成功…メジャーに出て行って、みたいな欲とか全然
ないの?

石井:たとえば『HEY!HEY!HEY!』に出てみたいとか。

トクマル:出られるもんなら出たいですけどね。

一同:(爆笑)。

米田:でも、トクマル君ならきっとダウンタウンとの絡みは面白いんじゃないかな~。

トクマル:(笑)。まぁ、「成功」ってどこが終着点がよく分からないですからね。

米田:そうだよね。有名になるとか、そういう価値なんて今はたかが知れてるしね。トクマル君って、自分のやりやすい環境を作りながら活動しているように見えるけど、たとえばプロモーション以外の、レコーディングとか制作面で文句言われるのは嫌でしょう?

トクマル:それでホントに良いものができるならいいんですけどね。不安なんです。

米田:トクマルシューゴってミュージシャンのことを一番考えているのはトクマルシューゴなわけだから。自分ができることとできないことをよく分かってる感じがしますよね。

5

面白いっていうのは危ないこと


photo by Tadayuki Aritaka


米田:話を聞いていると、とにかく音楽を演るのが好きというか、"fun to play"に尽きるというか。でも、たとえばひと世代上の、小山田圭吾さんとかとトクマル君の世代とでは雰囲気が明らかに違うような気がするんですよ。前の世代は、音楽をとりまくテクノロジーが凄く進歩していった時代だし、常に競争があったように思えるし。

トクマル:面白いっていうのは危ないことだし。やっぱり危険な橋を渡るのはそりゃ危険なわけで…。本当に面白い音楽をやろうとする人たちって、あんまりいないですよ。

米田:うんうん。音楽の各ジャンルがここまでフォーマット化されると、その枠の中で凄く洗練しようってのはあるんだけど、前提なしでイマジネーション全開で何かやろうとしてるのは、正直トクマル君以外、ぱっと浮かばないんだよね。

トクマル:いやいやいや。

米田:ホントそう思うよ。道っていうか、DJ道とかロック道とかってのを歩もうとはしてる人はいるんだろうって思うけどね。

トクマル:道を突き詰めることは凄いことですからね。

米田:トクマル君は誰か気になるミュージシャンはいます?

トクマル:大阪のバンドで「ウリチパン郡」※は面白いですよ。ごちゃまぜなんだけど、新しいというか。

※ウリチパン郡…2003年結成。OORUTAICHI、YTAMO、千住宗臣(PARA、V∞REDOMS)、亀井奈穂子の4人編成。2008年発表の2rd『ジャイアント・クラブ』ではジャズブラジル、アフロビート、フォルクローレまでも彷彿させる多彩なサウンドを見せる。

6

ツアー、テレビ出演!?


米田:今年はツアーで世界中を回るんですか?

トクマル:とりあえず9月にアメリカにプロモーションツアーで行きます。

米田:ほかに今後の予定は何かありますか?

トクマル:『EXIT』のアメリカ盤が出ますね。あとは新しいアルバムを作りたい。今のところは分かんないけど、とりあえず今までやってないことをやりたい雰囲気です。

米田:ということで、フューチャーソースが何もないということになってしまって(笑)。

トクマル:ねえ。

米田:ないからUFOとかお笑いとか挙げていい?

トクマル:いいですよ。

米田:あとは基本的に「ない」っていうのも新鮮でありかも。

トクマル:未来はないっていうか(笑)。

米田:いやあ、すぐに人気出て『トップランナー』とか出ちゃうんじゃないのかなあ。

トクマル:『トップランナー』っていいですよね。トップじゃない僕でも……

米田:あははは。じゃあ、そろそろインタビューを切り上げて、裏に気持ちのいい丘があるんでそこで撮影といきましょう!

photo by Tadayuki Aritaka

1980年、東京生まれ。ミュージシャン。100種類以上の楽器/非楽器を操り、レコーディングからミックスまで全てをひとりで行なう。デビュー作『Night Piece』(2004)、2ndアルバム 『L.S.T.』(2005)の海外リリースによって、世界中の音楽ファンから絶賛を浴びる。ライヴ形式はソロ、トリオ、カルテットと様々だが、8人編成の「トクマルシューゴ&ザ・マジックバンド」には、SAKEROCKの田中馨、Harpy/d.v.d.のイトケン、LOVES.の岩谷啓士郎らが参加。2007年10月には3rdアルバム『EXIT』をリリース。フジロックフェスティバル08'にも出演。

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インタビュー:米田知彦(TS副編集長)
協力:石井絵里
写真:有高唯之(人物)、山崎あゆみ(ライブ)
場所:東京・中目黒
日時:2008.4.28

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