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栗城史多 (登山家/アルピニスト) 後半


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FUTURE SOURCE


チベットに学校を作る

チベットに学校を作ってチベットの「教育」に貢献したい。日本のニートに協力してもらうのも面白いと思ってます。

梅佳代さんと付き合ってみたい

雑誌の対談でお会いしたんですけど、素敵な方でした

南の島

たまには南の島で羽を伸ばしたいですね。全てをリセットして。

モノを作って売ること

何か形としてモノを残してみたい。その中でも「石鹸」を作って、自然なものの素晴らしさを伝えたい。

火星

2060年に80歳になったら火星の山を登ってみたいです。そのためにはロケット作るために、24億円貯めないといけないんですけど


>>チベットに学校を作る
栗城:チベットの村って学校がないんですよ。だから学校を作って、教育を受けられないチベットの環境を少しでも改善したいです。チベットにはベースキャンプでお世話になっているので、その恩返しをしたい気持ちもあります。学校を作るにしても、募金だけ持っていって作るんじゃなくて、海外行ったことないような日本のニートをトラックで連れて行って、強制的に労働させて学校作らせちゃった! とかいいですね。僕も登山家になりたての頃にメディアから「ニート登山家」なんて呼ばれていたんで、ニートのことも気になっているんですよね。

>>梅佳代さんと付き合ってみたい
(※栗城さんは直前に他の雑誌の企画で写真家の梅佳代さんと対談)
栗城:雑誌の企画でお会いしたんですけど、梅佳代さんの好きなタイプがジャニーズだったというのが悔しいですね。結局、面食いかよ! みたいな(笑)。

南極の最高峰ビンソン・マシフにて

>>南の島
栗城:羽を伸ばしたい。全てをリセットしてしまいたい。バンガローに泊まって、ウミガメに迎えにきてもらうとか(笑)。

>>モノを作って売ること
栗城:ある人から「君は虚業家だ」っていわれたんですよ。実業家っていうのはビルを建てたり、モノが残ったりするけど、僕の場合はバキュームみたいにお金を吸い込んで、そのまま海外に流しちゃって何も残らないじゃないですか。ニュースか人の思い出に残るくらいで。それはそれでいいのかもしれないけど、形としてモノを残してみたい。

坂口:具体的にはどんなものを残したいと思ってますか?

栗城:石鹸がいいですね。映画『ファイトクラブ』の中でブラット・ピットが石鹸売りの行商人役をやっていて、それがかっこよかったんですよね。今、大量生産のものばかりで、人間が毒されてると思うんですよ。だから極力、自然なものを、と考えています。でも、自然なものって実はハイテクなんですよ。登山のアンダーウェアは汗を暖める機能があるんですけど、どんなに最先端でも羊の毛のウールには勝てないんですよね。自然のものの方がハイテクで、よく出来ているんだということを伝えたい。

>>火星
栗城:2060年に火星の山に行きたいと思ってます。2060年って僕は80歳くらいなんですけど、いろいろと山も登ってきて、そろそろ肉体も疲れてきて、80歳でも登れる山は何かな? ってなったら、火星じゃないかと思いついたんですよね。火星にエベレストの標高3倍くらいのでかい山があるんです。ちょうど北海道に宇宙開発をやっている会社があるんですが、そこが24億円あったら宇宙船を作ることが出来るらしいので80歳までに24億円というお金を貯めに貯める。そして2060年には火星が地球に近づくはずなんですよ。勝手に僕が思っているだけでなんですけど。人類初、火星に入って何をするのかと思ったら火星の山を登る!(笑)。 しかも火星って重力が地球の3分の1くらいなんで80歳の僕でも登れるかな、なんて。

2

現代版わらしべ長者


ベースキャンプからネットで途中経過を報告する

坂口:栗城さんはたった1人で自ら広告塔になって資金を集めていますね。そのやり方がユニークだと思ったのは、実に多様な企業から協賛を得て、しかも事務所に頼らずインディペンデントで動いていますね。

栗城:そうですね。1番最初に訪ねたのは宿予約の雑誌「じゃらん」でした。突然、「編集長いますか? 」って電話して協賛をお願いして、快諾をもらいました。他にはHISやニトリ、POKKA、国土交通省など本当にいろいろですね。
自分では「現代版わらしべ長者」と呼んでいるんですけど、1本のわらを他の人に繋いでいって、つたっていくんです。それをどんどん太いわらにしていく。つまり紹介してもらった人にまた次の人を紹介してもらうという方針で動いています。

坂口:面白いですね。そもそも今のような自分なりのやり方でスポンサーを集めようという発想の発端はどういうところだったんですか?

栗城:動いているうちに、「これは普通に働いていたらお金集まんないや」って気付いて、もうそれだけですね。高くなかったら普通に貯められますけど。しかも僕、募金が好きじゃないですよ。何かをした対価としてお金を集めたかった。あとはスポンサーにしても広告的な露出や講演の対価としてもらっていかないと続かないと思うんです。

坂口:なるほど。例えばエベレストに登ろうとするといくらくらいかかるんですか?

栗城:もし旅行で行くんだったらツアーに入ってだいたい800万くらい。でも自分で隊を作っていくと3000万くらいかかっちゃいます。ベースキャンプ(標高6400m)まで一緒に行ってそこから1人です。

僕は自分だけの冒険ってあんまり好きじゃないんです。実は山に登ることはたいして重要じゃないと思っているんですよ。重要なのは、山を登ることを通して自分が何を伝えたいかということの方です。じゃあ僕が何を伝えたいかというと、僕って、登山家としては全然すごくないんですよ。すごい人はまだまだたくさんいて、技術もまだまだだし、学ぶこともいっぱいあります。しかも技術習得のための訓練もろくにやっていないというどこにでもいる半端な人間なんです。でもそんな人間でも夢を持って頑張れば出来るんだっていうことを伝えたかった。見た人が、こいつでも出来るならオレもやってみようって、たくさんの人が元気になればいいと思う。

あとは7000mを超えると一気に世界が変わって、人間の力の及ばない山の世界になるんです。だから自分の力じゃなくて山の神々に感謝しないと力をもらえないんですよ。「向かっていく」という精神じゃダメで。自然との付き合い方ってこういうことなんだってことを、言葉ではなかなか分からないけど現象としてなら伝えられるかなって。

北米最高峰、マッキンリーにて

坂口:自然との付き合い方を知っているからこそ、攻めの姿勢ではないんですね。

栗城:いやいや。攻めたら疲れちゃう(笑)。

坂口:なんだか想像していた登山家のイメージとは違いました。ちなみに講演ではどういった内容を話しているんですか?

栗城:これまで僕がやってきたことを話しているだけで……特に変わったことはしてませんね。

坂口:企業の若手社員を対象にされることが多いんですか?

栗城:いや、実際は経営者向けの方が多いですよ。僕は社長さんも冒険家だと思うんですね。生きるっていうことはリスクのあることじゃないですか。全部自分に返って来るし、やってもやらなくても自分次第。そういった意味では経営者は冒険家だなと思う。でも社長さん方はある程度目標が達成されると、燃え尽き症候群になっちゃう人が多いんですよ。そんな時に僕の話を聴いて「あの時は若くて」って思い出に浸るんじゃなくて、今もやっぱりやらなきゃいけないんだと思ってくれたらいいなと。
三浦雄一郎さんなんて75歳超えてエベレスト登っている。すごく尊敬します。70歳超えたとしてもなんかやらなきゃっていうあの感覚はすごく分かるし、それをいかに持ち続けるかっていうことです。出来上がった人になったらやらなくなっちゃうじゃないですか。たしかに世の中やらなくてもなんとかなる。でもそれじゃあダメなんですよ。だから僕もエベレスト登ったとしても、その次は何か新しいことをやってると思います。

3

地球にありがとうって言えちゃうんです


南米最高峰のアコンカグア、テント前にて

坂口:登山家の中で影響受けた人はいますか?

栗城:やっぱり1番は大学の山岳部の先輩ですね。

坂口:やめたいと思ったことはないですか?

栗城:ないですね。

坂口:なぜですか?

栗城:やっぱり登れるとか登れないじゃなくて、自分が何をやっている時にわくわくするかっていったら登山なんですよね。お金もかかるし、いろんな人も巻き込まなきゃいけないし、リスクもとらないといけないし、全てをつぎ込まなきゃいけない。でも、それっていいなぁって思うんです。

坂口:いろんな立場の人たちが協力してくれると思うんですけど、周囲の人たちはいつもどんな反応なんですか?

栗城:端から見てる人たちは楽しんでいるだけですけど、周りで動いている人はえらい迷惑してますね(笑)。

坂口:でもその人たちの力も当然、栗城さんの登山には欠かせない要素ですよね。

栗城:そうですね。1人じゃ絶対無理ですね。最初にマッキンリーに1人で登った時と違って、今度は周りにいるスタッフや応援してくれる人も大勢いるし、みんなの気持ちを乗せて登るという意味では背負っているものが全然違いますね。

坂口:ところで、地球温暖化など環境問題についていろいろ言われている中、実際に世界中の山々を登ってみて、変化を感じたりすることはありますか?

南極ビンソン・マシフの登頂の瞬間

栗城:氷河が溶けてるのは感じます。僕が実際に回ってきた中でもそうだし、人に聴いても氷河の消失がすごい進んでいるという印象です。

坂口:この問題に関して伝えていきたいことってありますか?

栗城:実は僕、温暖化は「周期」なんじゃないかって思っているんですね。北海道の地元に縄文時代の遺跡があるんですけど、そこを調べると縄文時代の方が水位が高かったらしいんです。縄文時代の方が今よりも気温が高かったってことです。今、太陽の熱量がこの100年くらいで倍くらいになってきていて、太陽の磁場が出るとその影響で地震が多いらしいんですよ。だからCo2の問題もあるかもしれないけど、人間が出している二酸化炭素くらいで地球が壊れたりしないと思いますね。

坂口:じゃあ、地球はもう終わりだって嘆くのではなく、むしろ暑くなってきた地球に対応するという感じですか?

栗城:そう。でも地球をなんとかしなきゃって考えるきっかけとしてはいいと思うし。地球を大切にしなきゃいけないというのは間違っていないから。

坂口:では、最後の質問です。栗城さんにとって、「登山」とはなんですか?

栗城:う〜ん……やっぱり「地球」や「自然」を学ばせてもらえる1つの手段……でも「登山」と言っても正解なんてないから、僕自身何が登山なのかも分かってないですけどね。実際、何が正しいかなんてことは山にはない気がしていて、山とは何か? って言えるほど経験積んでないですね。

坂口:でも頂上に立った時は「征服したぜ」って気持ちになりますよね?

栗城:いや、嬉しいという感じじゃないんですよ。ありがたいって感じなんです。ありがとうございますって地球に言えちゃうんですよ。地球にありがとうってあんまり言わないじゃないですか。それが普通に言える気持ちになるのが登山かな。謙虚になれてしまう。

坂口:地球への感謝の気持ちが、謙虚で自然体な姿勢の源ってことですね。本日は、ありがとうございました。登頂の成功を祈ってます!

1982年北海道瀬棚郡今金町出身、札幌在住。ソロアルピニスト。2003年、登山を開始。
2004年6月の北米最高峰マッキンリーの単独登頂成功を皮切りに、12月に南米最高峰アコンカグア、2005年6月にヨーロッパ大陸最高峰エルブース、アルプス最高峰モディ、タキュル、モンブランの3山の単独縦走に成功。その後、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ、オセアニア最高峰のカルステンツピラミッド単独登頂も成功を収める。2006年1月の南極最高峰ビンソン・マシフ挑戦は滞在時間切れにより途中下山となるが、2007年12月には再挑戦にて単独登頂を達成する。世界7大陸最高峰単独登頂まで残すはエベレストのみ。現在、2009年春のチャレンジ実現に向け、奮闘中。

リンク:nobuklazu kuriki official site
栗城史多ブログ

インタビュー:坂口惣一(TS)
写真:栗城史多
場所:東京・汐留
日時:2008.8.8

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